組織文化 + 人材

私達の働くと言う体験はどのように変化しているか?

能力、関係性、自主性が、素晴らしい職場環境の中核をなしている。

所要時間 5分

360が初めて、この分野での受賞歴を持つ社会心理学者にして執筆者、そしてignite80のリーダーであるDr. Ron Friedmanと膝を交え対話した時、彼は私達に、何故従業員の素晴らしい職場体験を創る事がこれまでそれ程重要視されなかったかについて語ってくれた。Dr. Ron Friedmanと彼のignite80チームは、従業員の取り組みを向上させる為に世界中の会社と手を取り合い協同している。彼の本、The Best Place to Workは2014年に初版が出版された。360とのインタビューの第2パートにおいて(参照:パート1 幸せな職場環境の秘密)Dr. Ron Friedmanは、この本の上梓以降、素晴らしい職場環境の中核において何が変化し、変化しなかったのかについて話してくれた。

360: 本の出版から4年が経ちましたが、現在どのような変化が見られるでしょうか?

RF: 過去数年間でいくつかの変化を見て取る事ができました。一つは、たった数年前に比べても、社内チームの分散的な在り方が飛躍的に一般化したことです。組織は、各従業員が異なる場所にいた場合にどのように彼らを連携させるかと言う課題に挑戦しました。二つ目に、個人で集中して行う仕事が会社にもたらす貢献レベルへの更に高い評価です。私がこの本を書いた時にはコラボレーションが大流行りでした。しかし今私達は、人々が数分おきに邪魔される事がない仕事の場所や機会を創る事の必要性を認識しています。

最後に私が感じる事は、昨今、人々が常に繋がっている状態にある大きな波がますます加速しているという事ですが、これは良し悪しです。どこに行く時でもオフィスを連れて歩き、それを断ち切る事が出来ないという意味では悪い点となります。しかし適切な方法で付き合えば有益です。非常に良い例として、電話を使って自分の発言を録音し、メモとして残すウォーキング・ミーティング(歩きながらのミーティング)が挙げられるでしょう。様々な場所で思いついたアイデアをメールで自分自身に送る事もできます。これらはある意味私達のパフォーマンスを向上させますが、休憩をとる為の適切な習慣が確保されない限り仕事から逃れる事ができないように感じるという点では、非常に不自由でもありますね。

360: これまであなたが訪れたオフィスで、職場環境デザインへのアプローチ法が人々の働く体験に変化をもたらした事例を目の当たりにした事がありますか??

RF: インフォーマルな空間の重要性を人々が更に認識して来たことをよく感じます。職場で自分のデスクから離れて何かを行う事は、これまで時間の無駄だと見なされてきましたね。しかし私達がインフォーマル空間で時間を過ごすという事は、更に能率的なコラボレーションへとつながる、同僚との関係性をより深める為の話し合いであるという理解が広がって来ていると思います。共に働く仲間とより緊密な関係にあると感じると、私達のパフォーマンスは向上するものです。

360: 私達の仕事は日々変化し続けていますが、素晴らしい職場環境を創る事において普遍的なものはありますか?

RF: 勿論です。職場環境作りを成功させる中核にあるのは、あなたがいかなる時も3つの基本的な心理的ニーズ(要求)を満たしているという事です。まずは能力に対するニーズ-自分は仕事ができるという感覚を持ちながらも更なる成長の機会があるという事。そして関係性に対するニーズ―他の人々と有意義な関係を構築でき、自分には価値があり又尊敬されていると感じる事。最後に自主性へのニーズ―自分の働き方を自身で決定する裁量を与えられている事。

360: 今日の職場環境は歴史的に最も多様化していますが、全ての人々のニーズをどのように満たしたらよいのでしょうか?

RF: ソリューションが人々に選択肢を与えており、これは正に自主の重要性を表しています。即ち、各個人に働き方をある程度コントロールする権利、その一つとして自身の働く場所を選ぶ権利を与えるということです。働く為に最も適した場所に関して私は、組織に対する大変良いロードマップとして大学の例を引き合いにします。学生がどのように大学内で時間を過ごすかを考えて見て下さい。図書館や寮、カフェテリア、緑の芝生の中庭やジム等、その時間しなければならないことによって彼らには様々な場所の選択肢が与えられているでしょう。

職場環境の未来は、自身のパフォーマンスを向上させる為にそこで働きたいと従業員に思わせる、魅力的なロケーションにかかっています。それこそが人々が結局のところ求めていることであり、故に素晴らしい職場環境を創ろうと思う時に私達がまず考える必要がある事なのです。答えは、利益性のみでなく、人々のパフォーマンスを向上させる為に最適なオフィスを作る事にゆだねられているのです。

360: 仕事をこなす為の場所ではなく、人々に自主性を与える場所としての職場環境をどのように推し進める事ができるでしょうか?

RF: あなたが他の人々にどこか特定の場所へ行くよう要求したとします。翻ればそれは自身のコントロールを持つという基本的な要求に反する為、恐らく彼らの最高のパフォーマンスを引き出すことはできないでしょう。オフィスにおいて、人々にある程度の選択肢を与えるという事は非常に重要です。彼らに他の人々から離れて自分の仕事に集中する権利を与えて下さい。同時に仲間とコラボレーションができる空間をも提供する事で、人々は会議室を予約することなく集まり、カジュアルな対話をすることができるでしょう。更に、エクササイズや昼寝をする為の休憩室、ヨガ等、精神的なエネルギーを充電する機会を提供することも大きな意味がありますね。

360: 従業員の職場における体験には、物理的な環境がどの程度重要な割合を占めていると思いますか?

RF: 私達の物理的な環境は私達の精神に非常に大きなインパクトを与えます。あなたが身を置く場所は、あなたの思考方法に影響を与えるのです。例えば、高い天井はあなたのクリエイティブな思考の質に、家具は思考の柔軟性に影響します。人々に幅広い選択肢を与える多種多様なセッティングの職場環境を創ることで、彼らは仕事を働く環境に合わせるのではなく、環境を仕事に合わせることが可能になります。各自の仕事を行う為に最適な環境の中で働く権利を与えることは、結果的にはるかによい成果を生み出すことにつながるでしょう。どの程度環境が大事かと言う質問への答えは、あなたが考え得る中で最も重要なものの一つだという事です。


Dr. Ron Friedmanは受賞歴のある社会心理学者で、人間の動機づけとトップパフォーマンスを専門にしている。同氏は The Best Place To Work: The Art and Science of Creating an Extraordinary Workplace. の著者であると共に、従業員の取り組みを向上させる為に尽力する組織、 ignite80 のリーダーとして、社員の取り組みを強化し、従業員の職場体験を向上させる為の科学的な実践手法を組織のリーダーやチームに提供している。

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優れた人材を獲得できるかは結局のところ、「従業員体験」をいかに高めるかが鍵になる。