ウェルビーイング:2020年のオフィスデザインの主要要素
Steelcase Global Design Studioは、2020年に注目されるであろうオフィスデザインの考慮事項を下記の5項目と予想している。
「才能獲得競争」、「デジタルトランスフォメーション」、「サステナビリティ」。これらの3つのマクロな影響が今年のオフィスデザインを劇的に変える大きなきっかけになるであろうと私たちは予測している。360編集部は、オフィスの未来を主に研究しているSteelcase Global Design StudioのデザイナーであるKaitlyn Gillmor氏とシニアインテリアデザイナーのJon Rooze氏に話を聞いた。
彼らが一応に主張したのがオフィスデザインに共通して重要な要素は「ウェルビーイング」だと言う。人々の生活や仕事に深く浸透したデジタル時代にあって、企業の成功や繁栄の中心にいるのはあくまでも人間であると言う意識が高まっている。
「社会をリードする企業組織は、その企業価値という観点から働き方を発信することでブランド価値を高め、顧客や従業員を引き付けることで差別化しようとしています。」とRoozeは語る。
オフィスは企業組織の非言語コミュニケーションのツールとして重要な役割を果たしている。 GillmorとRoozeが注目している設計デザイン上の考慮点は以下になる。
1. 発端にあるストーリー
人々は、どこで働き、どうモノを消費するかの発端にある考え方を知りたいと思っている。今の時代、消費者のマインドは、完璧さではなく自然素材やデザインの多様性を取り入れることに移行しているといってもいい。それは働く場所や購入するものともっと深く繋がりたいという想いにもつながっている。
オフィス事例
- – 核となる要素は「透明性」。企業価値や企業風土に賛同するには水面下で何が起こっているかが見えなければならない。デザイナーは、製品やサービスの背後にある影響やインスピレーション、そして、人のつながりを把握しながらスペースの周りにあるものを計画していく必要がある。
- – 廃棄物は資源であるという考え方。企業やデザイナーは、無駄と考えられていたモノを再利用し、スペースに価値を加え、その消費の仕方に納得できる方法を模索している。
- – デザイナーは、今までにない方法で自然をオフィスに融合するために生物学で何ができるかを積極的に模索している。例えば、 菌糸テキスタイル への関心の高まりはテキスタイルの加工方法をも変えているのだ。キノコの菌から作られた生地は非毒性、防水性、耐火性に優れている。
2. 企業文化につながる
職場での 燃え尽き症候群や孤立感といった状況の中でその人材の重要性 を鑑みると、職場環境は企業文化を共有することでコミュニティとしてつながる機会を生み出すこともできるのだ。スペースとはそこに足を踏み入れた瞬間に会社の企業価値が分かる一つの方法でもある。
オフィス事例
- かつて消費者向け製品そのものがメッセージを伝達していた巨大ブランドは、今は明確な企業メッセージで市場を先導し始めている。人々はもはや顧客体験と企業価値を区別していない。
- かつて消費者向け製品そのものがメッセージを伝達していた巨大ブランドは、今は明確な企業メッセージで市場を先導し始めている。人々はもはや顧客体験と企業価値を区別していない。組織の中で従業員のウェルビーイングがあらゆる面からサポートされた場合、人々はどう感じ、仕事はどう捗るかに注目が集まっている。単にジムを設置したり、ヘルシーな社食を提供するだけでなく、照明、素材、色、 交流スペース などそこで働く人の気分を良くする方法を模索している。
3. ソーシャルメディア
アメリカではネット通販の台頭によって購買スタイルが変化し、小売業は過去10年間で12,000店舗が閉店に追いやられた。この現象は「小売業の黙示録」と呼ばれた。小売業を刷新した店舗は顧客を引き付けるために劇場型で交流に重点を置いた体験を提供し、今やグループで訪れたいと思える目的地として知られるようになった。
オフィス事例
- 人間とは本質的に社会的な動物である。人々が結局はオフィスに出社している状況を見てもそれは明らかである。チームワークも増えている。オフィスデザインもゴルフのパッティング練習場やビールが入った冷蔵庫があるなどという仕掛けを凝らすのではなく、よりコラボレーションを促し、インパクトのあるスペースやツールの設置へと移行している。
- 職場環境は、チームワークをサポートするだけでなく、ミツバチの他花受粉のようにチーム以外のメンバーと接触することでのアイデア発展も考慮して設計されるべきである。 「人間はイノベーションを加速させるためにどう集団的思考から離れるかに意識を向けなければならない。」とGillmor氏は語る。
4. 摩擦のない環境
時は金なりというのは今も変わらない。時間は贅沢品なのだ。テクノロジーは職場のあらゆる層に組み込まれ、人々はより集中し、時間に優先順位を付け、無駄な業務から解放された。アナログ、デジタル両方の要素によって仕事は格段とスムーズにこなせるようになった。
オフィス事例
オフィス家具はチームが家具を自らの手で瞬時に再構成できるようにデザインされている (例えば Steelcase Flexコレクション)
オフィススペースに足を踏み入れると、デジタルアシスタントが自動的にスペースを予約する (現れない場合には自動的に予約はキャンセルされる)。
SteelcaseのSILQ チェアは材料科学のイノベーションによって生まれた。座面の高さ調節だけで身体の動きに合わせてチェアが呼応するチェアだ。
最近の小売の顧客体験は、QRコードを活用して何を試着したいかを決定し、その場で試着室を予約できる。
5. 印象づける
職場での画一性はますます少なくなるだろう。多くのデザイナーは、オフィスをよりパーソナルで個人ワークやチームワークにシームレスに対応するよう再考し始めている。
オフィス事例
- 多くの コラボレーションスペース が個人やチーム専用に利用されることはもはやない。しかし、デザイナーはこれらの共有スペースを自分(チーム)仕様にできる方法を探しているのも事実だ。自席でのパーソナル化とは決して自分の小物を並べ立てることではない。あくまでも機能でありパフォーマンス向上を狙ってのものだ。テーブル、チェア、照明を動かして、作業スタイルに合わせてスペースをより自分にとって機能的にすることなのだ。
- AIやその他のデジタルツールによって、企業は顧客により良い製品を、そして、従業員により良い働き方を提供できるようになった。
「従業員と顧客のために会社の企業価値を伝える方法を組み込むこと、そして、個々がアイデンティティを表現し、会社への帰属意識を助長することによって信頼を構築すること。この2つのバランスです。」とGillmor氏は言う。
2020年、人がどう感じ、考え、動くかを考慮する新たなデザイン要素に是非注目してみて欲しい。ブランドや製品の透明性が高まり、有意義なつながりを構築し、仕事がますます容易になり、より個を重んじる様々な方法に出会うことは間違いない。