ウェルビーング

北欧式「Hygge(ヒュッゲ)」をオフィスに

新たな提携がデンマーク発、心地よさの概念「Hygge(ヒュッゲ)」をオフィスに持ち込む。

所要時間 7分

Paul Sanders、EMEA地域担当ディレクター、Steelcase

デンマークで生まれた「ヒュッゲ」という概念がメディアでも多く取り上げられ注目を集めている。イギリス(Country LivingBBC)から始まり、その後アメリカ(The New YorkerNew York Times)へ飛び火して広がりを見せている。デンマークには長く厳しい冬があるにも関わらずデンマーク人は何故あんなに幸せなのか。フランスの「Bon Vivant」(人生を楽しむ、よく食べるなど)、イタリアの「スロームーブメント」(スローフードなど)も有名だが実際に生き方をアートにまで極めたのはデンマーク人であるとも言える。

Steelcaseは、デンマークのモダン家具メーカーであるBolia(ボリア)と提携することでオフィス家具の選択肢を広げ、住宅の心地よさとヒュッゲスタイルをオフィスに組み入れようとしている。105年の歴史があり、長年にわたって働き方、働く人、働く場を研究し続けているメーカーとして、伝統的な北欧スタイルを打ち出すBoliaとの提携によって大胆かつ上質な素材で温かみのあるオフィス環境を創出することが可能になった。

「ヒュッゲ」とは?

「ヒュッゲ」を知らない人に対してその本質を正しく伝えるのは難しいかもしれない。実際、その翻訳に携わったToveMaren Stakkestadは次のように記した。。「ヒュッゲという言葉は翻訳される前提で作られた言葉ではありません。しかし、hyggehouse.comにある説明はそれを要約しながらうまく表現しています。」

「ヒュッゲ」は、ある特別な感覚や瞬間を表現したデンマーク語である。ひとりで、友人と、自宅で、屋外で、日常、非日常などどんな状況であろうとそこは居心地がよく、楽しく、そこにはいつも格別な時間が流れている。正式には意識とか、ある種のスロー感、ただそこにいるだけでなくその瞬間を意識しながら楽しむという意味もある。

BoliaのPhilippa(フィリッパ)ラウンジチェアは休息やエネルギー回復のためのスペースを創出します。

「ヒュッゲ(hygge)」はノルウェー語の「幸福」という単語。同様の概念は他の国にも存在する。例えば、ドイツ語のgemütlichkeit、最も近いのはオランダ語のgezelligheidだ。そのすべての中心にあるテーマは、幸福感や快適さ、居心地の良さである。そして、時に帰属意識やコミュニティといった意味でも使われている。

なぜ「ヒュッゲ」が重要なのか?

デンマークの生活様式には幸せのヒントがあるとして注目されている。国連の2016年版世界幸福度報告書は、デンマークを地球上で最も幸せな国としてランクづけした。もちろん、経済の健全性やほぼ安定した完全雇用、世界最高水準の教育システム、生活の質などそれを裏付ける理由は多い。世界最大の人事コンサルであるMercerの世界生活環境調査のランキングでは、コペンハーゲンが世界の9位にランクづけされた。世界経済フォーラムのランクづけによると、Boliaの本拠地であるデンマークの2番目の大都市オーフスは世界で最も心を配る都市として認知されている。

「ヒュッゲ」は職場をどう変えていくのか?

これらの要素がオフィスを設計する上でどういった意味があるのかと思うかもしれない。物理的空間の居心地の良さは、それが自宅のリビングルームであろうとオフィスのプライベートスペースであろうとそこにいる人々のウェルビーイングを左右するという意味で欠かせない要素だからだ。出社したくなる発想豊かなオフィスが望まれる中、企業はようやく包括的視点から従業員ウェルビーイングを捉えるようになっている。従業員が身体的、精神的にどう感じるか、問題解決に向けての新しい働き方をどうサポートすべきかといったことがより注力されるようになったのだ。

北欧のデザイナーは、家族でくつろぐ暮らしや心地よい「場」づくりを世界中で提案している。現在、SteelcaseとBoliaは提携を組み、仕事の「場」と暮らしの「場」が融合させることで職場での思考を解放できるような空間づくりを提案しようとしている。

BoliaのLivaソファ、Ronda Pouf、CombテーブルとSteelcaseのUmamiラウンジシステムを組み合わせたコラボレーションスペース。

 

「ヒュッゲ」がウェルビーイングをサポートする

Steelcaseが実施した実態調査によると、今日の職場の多くは従業員ウェルビーイングをサポートするように設計されていない(「職場環境でウェルビーイングを向上させる」を参照)。それどころか職場環境が気づかないうちにコラボレーション(「職場環境でどうコラボレーションを改善するか」を参照)やイノベーション(「オフィスデザインでどうイノベーションを促進するか」を参照)の弊害となっている場合もある。

従業員ウェルビーイングをサポートするには、「働く」、「会う」、「交流する」ためのカジュアルで心地いい「場」を提供することが重要になる。これらの「場」では、多様な姿勢(立つ、横たわる、腰掛ける)をとれるだけでなく、仕事中に身体を頻繁に動かすことも促す。また、リラックスできる居心地の良いスペースでは、人は気を散らすことなく仕事に集中でき、一息することで認知的、情緒的側面からもウェルビーイングをしっかりとサポートすることになる。

「ヒュッゲ」でコラボレーションをどうサポートするか

巨大な多国籍企業の多くが在宅勤務を奨励したが、結局はオフィスに戻るように社員に呼びかけている。結局のところコラボレーションが創造性を引き出しイノベーションが加速することを認識したからだ。しかし、従来の画一的なオフィスに戻してもコラボレーション文化を浸透させることは難しい。ではどうすればいいのだろうか?

従来の執務スペースとは別に発想豊かになるような刺激的で心地よいスペースを提供することだ。コラボレーションをよりカジュアルにすることでコミュニティ意識が構築され、その結果として生産性が向上していく。予定外の偶然起こる出会いは互いを知り、信頼関係を築き、それが連携した協働体制のベースになっていく。カジュアルな「場」は、企業カルチャーを再構築する有効的な戦略ツールになりうるのだ。「場」がそこにいる人の行動をカタチづくり、最終的には企業カルチャーを築いていくというのが私たちの考えである。こういったことが従業員エンゲージメントの向上に寄与し、企業の業績アップを左右していくことも実証されている(世界のエンゲージメントと職場環境を参照)。

オフィスデザインを再考し始める際にこのデンマークのライフスタイルを参考にしてみよう。学ぶことは多いはずだ。そして職場での笑顔を増やし、従業員ウェルビーイングの改善に役立てよう。 SteelcaseとBoliaは共同で、この「ヒュッゲ」スタイルをオフィスに組み入れるよう啓蒙している。Steelcaseは、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアパシフィック地域の販売代理店を通じて、厳選されたBolia家具コレクションを販売している。提携Boliaの詳細をチェックしてみよう。

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