キャンプイグナイトで公平な機会を促進
Steelcaseは、ルーマニアの農村地域の若者を支援しています。
Steelcaseのプロジェクトマネージャーであるアレクサンドラ・モルトバは、若い頃に参加したピース・コープ主催の10代向けキャンプが彼のその後の人生を大きく変えることになったと語り始めました。そして、いつの日か、自分が立場を変えて今の若者に前向きな影響を与えることができたらという夢を描いています。
モルドバが5年前にルーマニアのクルージュにあるSteelcaseのヨーロッパビジネスセンターに勤務し始めた頃、Steelcaseではソーシャルインパクトチームが結成され、その活動が始まりました。ソーシャルイノベーションのグローバルディレクターであるキム・ダブスはこう述べています。「私たちの事業活動のすべてが社会に影響をもたらします。ですから、確固とした包括的な方策と最適な提携先を探すことがその後の影響を大きく左右します。私たちは質の高い教育の提供と格差の撲滅を目指すパートナーシップに常に注力し、人と地球に前向きな変化をもたらすことを目指しています。」
ワールドビジョンの資金調達およびマーケティングのコーディネーターであるアリナ・フォッジスは、彼女のアイデアに即答で賛成し、それがキャンプイグナイト(Camp Ignite)プロジェクトの始まりでした。
ワールドビジョンは、教育の向上と学校中退率の低下に焦点を当て、資金不足の農村を対象に長期的なコミュニティプロジェクトを実施している団体です。欧州委員会によると、2018年のルーマニアの学校中退率は14〜18歳の10代の若者の間では16.4%、EUの平均よりも5パーセントも高い比率です。学校中退率が26%を超え、主に女性が占める割合の多い農村地域ではその数は危機的です。ワールドビジョンのプログラムの目標は、質の高い教育、課外活動、仕事の機会を子供たちに与えながら、家族の生活を改善することです。Steelcaseは、ワールドビジョンのプロジェクトを数年間資金的にサポートし、今日、その関係は真のパートナーシップへと発展し、キャンプイグナイトは第9回を迎えています。
キャンプイグナイトは、リーダーシップと批判的思考スキルの開発に焦点を当て、ジェンダーの平等、多様性や包含性を促進するものです。この5日間のキャンプでは、10代の若者が自己発見と能力向上に向けてのさまざまなプロジェクトを体験できます。Steelcaseは、年に2回開催のワールドビジョンプロジェクトから選ばれた30人の10代の若者を対象にしたキャンプセッションの企画と販促を担当します。このプロジェクトを通して270人以上もの10代の若者が旅立ち、Steelcaseの未来の才能獲得(現在、90%の確率)にもつながっています。
キャンプの展開を担当するSteelcaseのファシリテーターであるキンガ・パクスは、次のように述べています。「私はアレクサンドラと同じように、10代の頃にキャンプに参加し、その後の人生を大きく変え、自分の成長を後押ししました。参加者だけでなく、活動に携わる私たちをも刺激させられるのです。キム・ダブスはこうも語っています。「私がSteelcaseを選んだのはこのような社会的変革を促す活動にも深く関わっているからです。連携しながら何かを成し遂げるその革新的な手法で社会的に影響を及ぼしているだけでなく、地域の声を尊重するように従業員に自由と柔軟性を与えているところが企業として素晴らしいからです。」
Sシニアデザイナーのニコール・アンドレドロックは、キャンプでの経験についてこう語っています。「ファシリテーターは答えを持っているわけではありません。ただ、質問をし、安心して対話ができる場をつくることが私たちの役目です。」
キャンプは誰もが公平に声を上げられる場所です。共感や適応力を促し、なるべく多様でマルチな視点や思考を表面化できるようにサポートします。参加者の1人であるドラゴスは「このキャンプの凄いところは自分を100%素直に表現できるところです。」
「キャンプは誰もが公平に声を上げられる場所です。」
インガ・パクス 、Steelcaseファシリテーター、Camp Ignite
フォッジスはこの活動がなぜ非常に重要であるかを次のように説明しています。「ワールドビジョンによると、農村地域では性別役割分担が明確です。母親は家にいて家事や子供の世話をし、父親が経済的に家族を支えるというのが基本でそれを逸脱することは歓迎されません。いじめや家庭内暴力は非常に頻繁に発生します。サーカーは男子のスポーツで男子は泣くことは恥だとする固定概念を打ち破ることは難しいとされています。
2016年に参加したアデラは、キャンプイグナイトで考え方が変わったと語っています。「私はクルージュ郡のバチウ村から参加しました。振り返ってみるとここでの体験は世界の見方を変えました。今、私はクルージュナポカ大学の文学部で英語とドイツ語の言語と文学を学んでいます。ルーマニアの社会では女性の立場や役割はまだまだ低いですが私は自分の夢に向けて立ち向かうことを恐れていません。」
コロナ禍の制限で2020年のキャンプは完全にリモート形式で実施されました。全員をタブレットで繋ぐのは決して容易ではありませんでしたが最終的にはうまくいきました。そして、終了の際にはそのタブレットが参加者に贈られました。
「頭の中ではこう叫んでいるのです。自分はできる、自分を変えられるって。」
アナスタシア、キャンプ参加者
今年参加したアナスタシアは、当初はリモートでの参加と聞いてただ単なるプレゼンに終わるのかと躊躇していましたがそれもすぐに払拭されました。まるでそれはキャンプでした。ファシリテーターと私との年齢差も感じることもなく、そのフラットな関係性にも驚きました。皆が互いの声に真摯に耳を傾け、キャンプ終了時には何でもやればできるという自信が湧きました。そして、頭の中でこう叫んでいるのです。「自分はできる、自分を変えられるって。」
キャンプの影響は計り知れないものでした。 「個人レベルでは10代の若者が自分への見方を変え、新たな自分を発見できたこと、固定概念や思い込みを打ち破り、新たな視点を受容できたこと、また、広くは地域コミュニティに影響を与え、社会の体系的な変化に貢献しました。」とパクスは語っています。
キャンプ終了後もそこで構築した人間関係は続きます。参加者は更なる切磋琢磨のためにバーチャルの「暖炉」と呼ばれる同窓生コミュニティを介して連絡を取り合います。または、将来のファシリテーターになることを選択し、自らのコミュニティでプロジェクトを立ち上げる人もいます。
「キャンプは私の行動変容に役立ちました。異なる視点を受容し、互いを認め、助け合うという規範。それは家族、都市や社会が本当の意味で尊重され、誰もが排除されない社会の実現です。