ラーニングカーブ
学生を集中させる
私は大学教授という肩書きから、よく学生から「この授業を習得するためのアドバイスは何かありますか?」と尋ねられます。
これは教育者であれば頻繁にされる質問ですが、その答えは共通しています:時間を管理する、授業中にノートをとる、集中するなどということです。しかし、集中するには1人で何かに向かう「場」が必要になりますが、そういう「場」を創造するのは必ずしも簡単なことではありません。
これらの「場」はまだまだ不足しています。特にアクティブラーニングは多くのコラボレーションや人間同士が交流する「場」を必要としています。いまや、図書館は静寂な本の保管庫ではなく、チームがプロジェクトとして使用する「場」へと変革されています。限られた予算やいつでも、どこでも、誰でも、何でもつながるユビキタステクノロジーのおかげで人々の生活はますます複雑になっています。
ここでのキーポイントは:アクティブラーニングは決して1人での静かな時間を必要としていないということではないということです。それどころか、実際には学習がコラボレーション寄りになればなるほど、1人で集中する「場」の必要性がでてくるということです。
全国の教室を観察すると、教員と学生がノイズに悩んでいることが分かります。「ノイズが異常に多い教育環境は精神的に有害というだけでなく、子供たちのウェルビーングに大きく影響を及ぼします。」と主張するのは研究員のArline L. Bronzaft博士です。他の調査でも、教育環境における音響調節の重要性が明らかになっています。
人々の熟考や集中をサポートする建物、教室、そして家具は教育施設を設計する場合の重要なデザイン要素になります。ここに、教育スペースで個人の集中をサポートする際の調査ベースのデザイン戦略のいくつかを紹介します。
様々な教授法や学習スタイルをサポートする豊富な学習の「場」を提供すること
教室を簡単にレイアウト変更が出来るようにすることで、教員はよりクリエイティブな指導法を実践でき、学生の意欲を掻き立てる多くの手法を試すことができます。
例えば、それはコラボレーションをサポートする教室レイアウトが瞬時に試験用セッティングに変更できるとか、プライバシースクリーン付きの可動式テーブルを使用することで学生は講義モードからグループワークモードへと瞬時に移行ができるというようなことです。また、図書館はもっとソーシャルで、コラボレーションや個人での集中ワークができるスペースを備えるべきです。
「オープン」、「囲まれた」、「閉じられた」スペースの各ニーズを認識すること
オープンスペース(スタジオ、学習ホールなど)ではユーザーがスペースをコントロールすることは限られています。集中し、熟考するには人の密度、音のレベル、プロトコルなどの要素を考慮しなければなりません。
囲まれたスペースではユーザーは1人で作業しながらも、他者とつながることもできるように配慮されています。イヤホンをしていても、他者の存在を意識できるレベルです。例えば、教室のコーナーに配置された低パネルで囲まれたスペースとか、奥まったり、凹んだりしている室内外のスペースなどがあげられます。
閉じられたスペースとは静かに熟考できたり、休息したり、集中できるスペースです。例えば、個室、パネルに囲まれた個人スペース、小さなアンクレイブなどがあります。これらのスペースでは視覚的、音響的なプライバシーが確保され、ユーザーに集中、熟考できる環境を提供します。
多くの姿勢をサポートする
私たちは固定机や固いイスというような快適とはほど遠い昔ながらの家具の中で我慢を強いられてきました。これからは学生が座る、立つ、横たわるなどの様々な姿勢がとれるセッティングを検討しましょう。身体を動かすことや姿勢を変えることは身体によく、学生はより意欲的に学習に集中できます。
教員にとっても、静かで集中できる環境を創出することは極めて重要です。学習プランの中に机に向かう作業も組み合わせることで、学生たちがマルチタスクの落とし穴に陥らないように、また、集中学習の間はスマホの電源を切るように仕向けることができます。
効果的に学習するためには静寂の中での集中学習を含む全体の学習リズムを考慮した様々なタイプのスペースを設置しましょう。