在宅勤務の経験は、地域、業界、職種、職務レベルなどさまざまな要因によってもその捉え方は大きく異なります。居住環境の質、家庭内環境、自宅での集中できる空間、個々のワークスタイルなどがその感じ方や仕事の捗り方に大きく影響します。都市中心部に住む人の住環境は、郊外や地方に比べて狭いという事情もあります。
しかし、共通して言えるのは、どの国でも在宅勤務に戸惑いや不満を感じている人が多いことです。企業はこの在宅勤務の経験を教訓として、従業員が将来豊かに働ける環境をいかに創造するかが今後の成長に向けての鍵になります。
在宅勤務の主なメリットと課題
在宅勤務の感じ方や意識は、国や人によって異なり、そのメリットや課題もさまざまです。当データは、各国の共通課題と違いを明らかにしています。
通勤なし:メリット
在宅勤務導入の一番のメリットとして、通勤しないこと、通勤時間に疲弊しないことを多くの人が挙げています。
10か国中8か国が通勤ゼロを最大のメリットとして評価しています。
中国は2番目、 インドだけがそれを大幅に下回りました。「通勤の45分を無駄にしなくていい」、「午前中にランニングをしてすぐに仕事に取り掛かれる」 など、多くの人はその環境そのものではなく、通勤にかかる時間やそのストレスを最大の理由として挙げています。
「通勤は時間の無駄である」ことを多くの人が実感しているという事実は、今後の企業の長期的不動産戦略や働き方改革を実行する際には検討すべき項目です。一方で、自宅とオフィスの移動というある程度の通勤は、プライベートと仕事の気持ちの切り替えになるというメリットでもあることも考慮すべき点です。
孤立感:課題
世界中の多くの人が在宅勤務中の孤立感に悩んでいます。
実際、孤立感による体調不良は10か国すべての被験者の中で最も高いランクにあります。
特にオーストラリア、メキシコ、スペインで高く、他の要因と比べても2倍にもなります。
効率という意味で積極的な在宅勤務導入を推進する企業もありますが、人間は本来社会的動物であり、孤立の中では豊かな人間的成長はありません。社会的孤立や孤独といった問題はコロナ禍前にも問題視されていましたが、コロナ禍によってそのリスクは一層高まったといえます。オンライン会議では、人間同士が肌で感じる温かみのあるつながりを再現することは難しいのです。
エンゲージメントと生産性:メリットと課題
従業員のやる気や意欲を指すエンゲージメントと生産性の評価はそう単純な問題ではありません。調査をした10か国中7か国で在宅勤務で低下したと感じる傾向にあるのがエンゲージメントと生産性で、生産性はほとんどの国で低下しています(メキシコを除く)。
一方、生産性が向上したというのも上位5位以内にランクインしています(カナダは6位)。このように生産性を巡る評価は大きく2つに分かれています。
このことからも分かるように、在宅勤務は人によって感じ方も異なり、その評価もさまざまです。生産性レベルは人の心の状態や感情によって影響を受けるという説を裏づけるといってもいいでしょう。本調査では、在宅勤務下での従業員の満足度とエンゲージメント、および生産性との間に明確な相関関係があることを明らかにしています。満足度が低い場合にはエンゲージメントと生産性の両方は低下し、在宅で過重労働になりがちになる場合、そのレベルはさらに悪化します。
10か国すべてで、在宅勤務に不満を持っているとそのエンゲージメントと生産性は低下し、在宅勤務の頻度が増えるとさらにそれは悪化します。
在宅勤務でのエンゲージメントと生産性の両方においてその評価は2つに分かれますが、平均すると世界の従業員の41%が在宅勤務に不満を持っており、エンゲージメントと生産性の両方の低下を感じている傾向があります。
また、在宅勤務ではより集中でき、生産性が向上し満足していると感じる要因もさまざまです。例えば、自宅で高性能なオフィス家具、特に人間工学を考慮したチェアを使用していることが生産性の向上に役立っていることも調査で明らかになっています。しかし、その環境にいる人はアメリカでも24%に過ぎません。使用する家具によっては不快感や身体の不調につながり、仕事に集中できないということにもなりかねません。つまり、仕事をする場所がどこであろうと、注意散漫にならずに仕事に集中できる環境を持っているかどうかということを見極めなければなりません。
在宅勤務では、意思決定スピード、責任の所在の明確化、ワークライフバランスといったことに必ずしも好ましい結果をもたらさないと感じている企業も多いのが実態です。これらはすべて、従業員のエンゲージメントと生産性と深い相関関係にあります。意思決定スピードが遅く、仕事における自分の責任度合いが不明瞭で、長時間労働に陥りやすい場合、エンゲージメントと生産性はさらに低下することになります。
国別在宅勤務の
メリットと課題
在宅勤務を継続したい3つの理由と良くなかったと感じる点
在宅勤務に不満を持っている人の
エンゲージメントと生産性の低下
在宅勤務に不満を持っていてその頻度が多い場合は、仕事のパフォーマンスは低下します。
在宅勤務する人の5つの生活行動パターン
当社は、在宅勤務の経験を通して人がどう感じるかを深く探るためにアメリカとヨーロッパで定量的データとなるインタビューを実施しました。その結果、在宅勤務者には特長的な5つの生活行動パターンがあることが明らかになりました。
必ずしも誰もがこの分類のひとつに当てはまるわけではなりませんが、この在宅勤務経験を通して、オフィス勤務に戻った際に従業員の意識や価値観がどう変化しているかのヒントになるはずです。
ジレンマに悩む子育て世代
在宅勤務はノンストップ勤務
仕事と家庭の両立で悩むタイプ。会議と集中ワーク、家事、育児に追われ続ける長い1日。家事と育児をパートナーと分担しながら両方の責任をこなすことが求められる。長期化による倦怠感と後ろめたさとのジレンマに悩みながらも、最終的には自分は親であり、家族との団欒に幸せを感じている。一方で、オフィス出勤は仕事だけに集中でき、自己管理も容易であるとも感じている。よってオフィス勤務と在宅をうまく組み合わせながらより柔軟な働き方を求めている。
安心を第一とする自己管理タイプ
在宅勤務が一番安全・安心
心配はコロナに感染することではなく、その心理的ストレスであって心理的安定を求めている。企業収益のために社員を危険に冒してまで出勤させる組織体質にこそ問題があると感じており、在宅勤務を推奨しないのは社員を人間として尊重していない証拠だと豪語する。在宅の方が会社での煩わしい人間関係に悩むよりも不安やストレスが少なく、より集中できより多くの仕事を成し遂げられると感じている。より人間らしく仕事ができる環境が在宅だとも思っている。
欲求不満のクリエイティブなデジタルネイティブ
在宅勤務は日常からの浮遊
安全性という観点から、オフィス勤務再開には反対を訴えるタイプ。デジタルツールを使いこなし、デジタル環境への投資と導入を強く望んでいる。オンライン会議だけでは、創造性を発揮するコラボレーションや人との自発的なつながり構築にはまだ制限が多すぎると感じている。コロナ禍で仕事を加速させる対面でのやり取りが突然切り離された状況をいかに解消するかが大きな課題で、限られたツールとそのツールを使いこなせるスキル不足によって、在宅での個人主導型ワークになりつつある。
自律型自由人
在宅勤務で自由を感じる
オフィスにいる時も周りを気にする様子もなく、自分のリズムで仕事をしたいと考えている人は、在宅でもストレスなく、生産的に仕事をこなせるタイプ。窓の外を眺める、姿勢を変える、バランスの良い食事、ペットとの時間を大事にするなど自分なりの気分転換やリラックスさせる方法を意識的に行なってそれなりに幸せを感じている。仕事と生活のオンオフのメリハリがつくようにスケジュール管理し、自分なりに生活と仕事に楽しみを見出している。
孤立に悩むズーマー
在宅勤務は孤独との戦い
一人暮らしの狭い空間でのリモートワーク。日常の健康管理や勤務管理が疎かでオンオフの切り替えが難しい。会社が感染対策をきちんと講じた際にはオフィス勤務を再開したいと願っている。オンオフの切り替えスイッチという意味でオフィスを高く評価し、実際は通勤時間が仕事と生活の気持ちの切り替えだとも感じている。1日中ズームを介してオンラインで通話しているにも関わらず、孤立感を感じ、オフィスでの同僚との雑談や何気ないおしゃべりを懐かしく感じている。同僚との繋がりや組織を通してのサポートシステムを構築することで課題は解決できると考えている。
日本語版レポートを希望
下記フォームに必要項目*をご入力の上、送信ください。
hbspt.forms.create({
region: “na1”,
portalId: “1822507”,
formId: “bc2ffacc-d83c-49ce-90dc-7db35e7bb5f6”
});