インクルーシブ デザインを実践する
人間は、それぞれ異なるニーズや嗜好、能力を持った存在です。インクルーシブデザインは、人間が持つ能力、言語、文化、性別、年齢、価値観などあらゆる多様性を考慮します。実践にあたっての主な原則は、さまざまな実体験を持つ利用者をデザインプロセスに参加させ、利用者の声に耳を傾けること、つまり、利用者と共創しながらデザインするということです。この手法によって、多様な利用者に対する使い方の選択肢が広がり、誰もが帰属意識を感じ、適切に評価され、心理的安全性を確保できる環境が整うことになります。
スチールケースのグローバル人材担当チームは、最近、同社の本社がある米ミシガン州グランドラピッズキャンパスの中心部に拠点を移転しました。移転の目的は、インクルージョンを含めた新たな従業員対策です。新スペースは、従業員の誰もが立ち寄りやすい雰囲気へと様変わりしました。今までは機密性保護を重視し、敢えて人通りの少ない離れた場所に位置していました。
“会社としての目標は、多様性の中に強みを見出し、人間を組織文化の中心に据えることで従業員の信頼を得ることです。これを実現するには、効率的に成果を出すアジャイルな働き方を実践し、現在、そして、将来私たちが育みたい多様性に向けてのスペースを設計することです。”


分は、インクルーシブデザイン・アドバイザリーグループの設立でした。同組織は、デザインプロセス全体を通じて重要な決定を見直し、スペースと従業員体験がすべての従業員ニーズに応えているかを評価する役割を担います。メンバーの大半は、Well Institute* が定義する1つ以上の側面 (障害者、移民の最初の世代、神経多様性、人種的/民族的に過小評価されているグループ、LGBTQ+、介護者、女性と少女) に該当し、デザインの見直しプロセスに参加しています。

その活動には、グループ内外のワークショップ、コミュニティパートナーとのアクセシビリティの見直し、アプリやテクノロジーのプロトタイプ制作、調査、円卓会議などが含まれます。参加した100人以上から1,000を超えるデータが収集、解析されました。
「デザインプロセス全体を通じて、障壁を特定し、ミスマッチを明らかにするのが目的です。従業員の多くはオフィスのデザインが自分の能力やニーズに合わないと感じています。私たちは、身体的、認知的、文化的違いを考慮し、多様性、公平性、包括性の視点からすべてを検討、評価しています。」とインクルーシブデザインチームを率いるカマラ・サドベリー氏は語っています。
優先順位を見極めることで、コラボレーション・交流と機密性・プライバシー両方のニーズをどうスペースでバランスよく配置できるかを把握できます。「包括的な設計プロセスによって、予算の増額やスケジュールの遅延もなく、従業員ウェルビーイングを最優先課題に掲げ、十分な情報を得た上で最終決定を下すことができました。」とサドベリー氏は言います。
プロジェクトのハイライト
グローバル人材担当チームのオフィス環境は、下記の目標を掲げて設計されました:
浸透するハイブリッドワークを念頭に設計: オフィス回帰の動向とさまざまな知見をベースに、これからの新たな働き方と高まる従業員ニーズを重視する。
インクルーシブ デザイン: キャンパスの完全な再設計において、インクルーシブデザイン手法と最良の事例を意図的に採用した初のプロジェクトである。
コミュニティ全体を巻き込んだ設計プロセス: ケント郡障害者擁護団体による初のアクセシビリティ監査を実施し、障害者のガイドラインにどの程度準拠しているかを評価する。
発想力で再利用を推進: サステナビリティを念頭により持続可能かつ将来の変更にも柔軟な環境づくりを目指し、使用製品の 68% が再利用、リメイク、修理される。
適切な案内サインの設置: オフィス内の位置情報や道案内、多種多様なスペースへ利用者を円滑に誘導するための分かりやすいサインの設置を試す良い機会となった。