トレンドは豊富なチョイス。
クラフトやデータ、ロボット工学ではどうその品質を見直しているのか。
「お客様は定番であればどんな塗装色でもいい。」とヘンリー・フォード氏が言って以来、社会は大きく変わった。企業は新たに登場した従業員ニーズを満たすために企業カルチャーを進化させようとする中、 オフィスチェア, デスクシステム、 その他の製品にも個性と独自性が求められている。
しかし、大量生産をするメーカーが消費者や企業が真に求めているモノを創り出すことは果たして可能なのだろうか?可能だと私たちは考えている。私たちは優れた技能を持つ職人がどう考え、行動するかというデータから多くを学んでいるからだ。
しかし、チョイスの幅を増やすことが製造や品質にどう影響を及ぼすのだろうか?Steelcaseのグローバルオペレーション担当副社長であるRobert Krestakos氏が、この件について興味深いことを語った。また、今日のテクノロジーが品質上で果たす役割や今後の方向性についても尋ねた。
360: 新しいモノづくりを提唱したメーカームーブメントに象徴されるように、お客様である企業がスペースに個性を主張し始めるとスペースとしての一貫性はどうなりますか?
Robert Krestakos: モノ造りは特権です。Steelcaseにいるとそれをつくづく感じます。私たちはメーカーとして、ハイエンド、大量生産、数量ベースの製造と唯一無二、個性的、オーダーメイドに対する需要という2つの間にまたがるギャップを埋めなければならないのです。そして、私たちは職人という視点からこの課題に前向きに取り組んでいます。
今日、それはカラーや構成要素を豊富に展開すること以上の意味を持ちます。私が考える品質とは、予測可能で安定的な数量を確保できるように製品を設計、エンジニアリングすることですが、必ずしも全てが同じでバリエーションがないようにつくるということでもありません。私たちの業界では、製品を完成体で納期通りに損傷なく顧客に配送しなければなりませんが、その物流システムは非常に複雑で、数学と科学を駆使しながらその運用体制を整えなければなりません。しかし、データ駆動型ツールを導入したことで自由度と柔軟なエンジニアリングが可能になり予測が非常に楽になりました。当社では製品の開発段階から多くの設計オプションを考え、果たしてそれが品質とライフサイクルの観点から妥当かどうかを判断できるようになりました。これによって、後で追加したり開発をスピーディにしたりするのも容易になりました。そのプロセスとしては多様な構成ができるように設計されていますがどう機能するかは一貫しているのです。
360: 製品開発のスピード化はどう実現するのですか?
RK: 当社ではまず、一連の規則に従って色々と試すことが重要だと思っています。今日、意思決定はスピーディと同時にリスクを軽減し、製品を手頃な価格で販売し続けられるようにしなければなりません。通常の数量ベースの仕入れなのか、職人ベースの特注ニーズのための仕入れなのかをきちんと判断する必要があります。
また、製品認証や信頼性、保証といったものをどうすればいいのか?梱包はどうするのか?
梱包設計、製造設計、工業デザインはそれぞれに独立した異なる分野なため、この間でかなり面倒な調整が必要になります。例え、一回限りのオーダーの場合でも、全体を考えなければなりません。そして、出来れば当社の数量と製造能力のメリットは生かしたいと思うのです。
360:顧客にとって数量と拡張性が重要なのはなぜですか?
RK: 明らかなメリットのひとつはコストの削減です。何十年もの経験と研究により、実績のある部品や材料を複数の製品で共有しています。Series 1チェアはその良い例です。その軽量でコンパクトなチェアは、他のチェアと同じ性能、スタイル、機能、スペックの多くが組み込まれていますが、低価格での提供が可能になりました。手頃な価格帯のチェアをつくっても決してそのスペックは見劣りするものではないのです。過去から継承されたものと最近の包括的思考の導入が当社の製品づくりを進化させているのです。
360: 今日、テクノロジーはどの分野にも深く入り込んでいます。そこにはリスクがあると思いますか? それとも全てがメリットにつながっていますか?
RK: データは間違いなく、製造業を加速させます。高度なテクノロジーとビッグデータの世界では、シムレーションやデータ解析によって故障箇所をより正確に予測する性能が大幅に改善されるでしょう。おそらくいつの日か、その性能は実際の試験に置き換えられるでしょう。そして、近い将来には、従来のアプローチを補完する重要な要素になることは間違いありません。
注目すべき点は、製造業におけるモノのインターネット=IIoT(Industrial Internet of Things) によって、生産プロセスが飛躍的に変化を遂げていることです。実際に工場で働く人々の役割も変化しています。例えば、各ゾーンのリーダーは、製造プロセスの進め方についてのリアルタイムデータにアクセスし、進行中でも修正を加えることができます。また、センサーを活用して異常の有無を監視することもできます。特定の機器の機械公差の設定が変更され始めると、製造途中で問題が表面化する前にIIoTが警告します。これを私たちはプロセスの声(VoP=Voice of the Process)と呼んでいます。
データ駆動型ツールを導入したことで自由度と柔軟なエンジニアリングが可能になり予測が非常に楽になりました。
当社はビッグデータ(IIoT以前のデータでかつてはなかったもの)を採用し、全社的により厳密な方法で分析を行い、根本的要因につながるパターンを探し出し、開発と設計プロセスにおいてさらなる品質向上を目指しています。
360: ロボット工学は、テクノロジーの中でも非常に興味深く、変化の多い分野ですが、仕事がロボットに奪われるという懸念についてどうお考えですか?
RK: テクノロジーを利用することの当社の目的は、顧客に価値をもたらし、業績を向上させることです。特定のテクノロジーが仕事の本質を変え、一部の業務がなくなる可能性はありますが、それは決して今に始まったわけではなく、それが当社の目的でもありません。目指すのは製品をデザイン、品質、コストという側面から深く探り、より良い製品を生み出す方法を考えることです。状況によってテクノロジーは新たな雇用にもつながっています。
360: 将来何が起こるかについて最後に一言ありますか?
RK: 当社にとって、「品質は細部に宿る」という言葉は決して製品の品質だけのことを意味していません。それは注文を受けてから顧客に届けるまでの計画、材料調達、製造、納品、そして、必要に応じて途中で変更できるプロセス全体についても同じことが言えるのです。そして、来年、その翌年と期待が高まっています。難易度とスキルのレベルが上がった時、そしてすべてのピースが揃った時に何が生み出されるかにも大いなる期待をしています。
Coalesseのブランド製品において、その品質とモダンクラフトへの新たなアプローチがどうデザインに影響を及ぼすかについて語っています。詳細は360リアルタイムポッドキャストの「品質とクラフトにおける進化」でご視聴いただけます。