組織文化 + 人材

デジタル化への競争

データビジネスが成長を遂げる中、ITのプロは企業の前線で高度にアジャイルなチームを構築しながら、問題解決のプロジェクトに参画している。

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データは次世代の中枢になるだろう。デジタル変革が急速に進む中、他社との競争に打ち勝つための戦略を見つけた企業が、今後、高い収益を上げ、より迅速で戦略的な決定を下すことができるようになるのだろう。

「将来、あらゆるビジネスはソフトウェアビジネスになるだろう。」とMicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏は恒例のコンバージェンス会議で言い放った。

それはつい2015年のことである。確かにそれ以来、デジタル技術は飛躍的に進化した。米アマゾンの無人機配送、スペースXのロケット洋上着陸、人工知能、デジタルストレージ、ハイスピードの大量輸送などなど、挙げればきりがない

Microsoftとハーバードビジネスレビュー・アナリティクスサービスが共同で実施した最近の調査では、
その回答者の84%が、デジタル化の波がすでに業界を混乱に巻き込んでいる、または2020年までにそうなるだろうと答えている。3年以内に、従来のビジネスモデルは廃止されるだろうとその半数近くが確信しているのだ。 しかし、多くの企業は未だデジタル戦略を立案している途中だ。 McKinseyのThe Case for Digital Reinventionの報告書によると、デジタル化に成功しているのは業界の40%未満で、その競争はまだ始まったばかりだ。

As leaders accelerate the digital transformation of their organizations, those who want to compete are rethinking the role of IT.

「最も成功している企業の多くは、マーケット、顧客、業務上のデータを取得し、解析し、実用的な独自のインサイトを導きだしながら、顧客満足度の向上や業務の改善、現ビジネスモデルの転換などを実現している。」とMicrosoftのアプリケーションイノベーション担当ジェネラルマネジャーであるRimes Mortimer氏は述べている。

企業リーダーたちは組織のデジタル化を積極的に推進している。その中で競争に打ち勝っている企業は、ITチームの役割を再考し、その人材スキルと行動様式を新たに育てようとしている。今までは問わなかった敏捷性や創造性、対応力といった要素に、ようやく企業は価値を置くようになったのだ。

ITを変革する

「これまでのITというものが終わりを遂げたのです。これからは人間中心で、より自然で透明性を持った方法で、テクノロジーを変革し、活用し、消費する時代になるのです。」と主張するのはスペインのCiscoのテクノロジー担当ディレクターのLuis Palacios氏である。

これからのITとは、もはや、デスクに一日中座って、プログラミングをするITのプロや地下のサーバーの近くに配置されたIT部門のような過酷な「工場式ファーム」の様相とは大きく異なる。実際、IT部門はデータの解析、インサイトの抽出、積極的なコミュニケーション、将来のプロジェクト立案などに従事し、事業を成長させている。そうなると適応力や柔軟性といった要素が新たなITスキルとして求められていく。

「デジタル変革が進むにつれ、企業リーダーたちは、いかに従業員の能力を高めるかを再考することに迫られています。」

Rimes MortimerGeneral Manager, Applied Innovation, Microsoft

「ITは問題が特定され、計画が立案されて初めてプロジェクトに関わるのではなく、デザイン思考のフェーズから参加すべきです。 どういう問題を解決しようとしているのか? どのような顧客を念頭に置いているのか? こういうことが仕事での成功スキルを変化させているのです。」とSteelcaseのIT担当副社長でCIOであるTerry Lenhardtは言う。

現在、ITの仕事には従来のITスキル以上の能力が要求されている。ITチームにはコミュニケーターやコラボレーター、そして、クリエイターというスキルを保持する人材が求められているのだ。知性と感性で顧客に訴えかけ、瞬時に適切に対応できる人材である。デジタル分野での競争が激化するにつれ、多くの企業がこのような突出した才能を求め、彼らをいかに引きつけ、定着させるかを模索している。

Mortimer氏は次のように述べている。「デジタル変換とはITによる事業の根本からの変換です。今後、ITのプロというのは「チーフ・コラボレーター」として、ビジネスとテクノロジーが交差する中で、組織を横断しながら多くの部署と仕事をすることになるでしょう。」

アジャイルプロセスを活用すると、チームはより顧客重視になり、プロセスの結果として、素早く反復しながら、顧客について学ぶことになる。

「アジャイル」への道

これらの新しいチームの働き方も今後大きく変化しなければならない必要性に迫られるだろう。テクノロジー開発グループの多くは、もうすでに「アジャイルソフトウェア開発」を導入している。これは素早く高品質なソフトウェアを開発するための概念で、2001年に、ソフトウェア開発者たちの集団が、「アジャイル=俊敏な」という用語を一群のソフトウェア開発手法の総体を意味する言葉として使用したのが最初である。アジャイルソフトウェア開発宣言には、刻々と変化する環境の中でチームが変化を起こし、進化するための12の原則が提示されている。「アジャイル」とは権限を与えられた多機能チーム間の連携を通じてソリューションが進化するという一連の手法を指している。

チームは数年または数か月間、プロジェクトに取り組み、顧客に完璧なソリューションを提供するというより、顧客ニーズに即したソフトウェア開発をより安全に、迅速に行うというものだ。そうなると豊富な人材からなる権限を持つチームが、顧客との連携を深めながら、フィードバック機能を取り入れ、学び、素早く反復していくという作業の進め方になる。

今日のユーザーはより迅速な製品、サービスの開発や頻繁なアップデートを期待している。これはスマホのソフトが数ヶ月ごとに更新されるのを見ても明らかである。 CiscoのPalacios氏は、アジャイル開発の例をこう記述している。

「過去、私たちはある製品を開発するのに、まず20もの機能が揃ってから市場に製品を導入していました。しかし、今は違います。明日必要なものからまずは始めるのです。例えば、インターネット経由で電話をかけるニーズがあると判断したとしましょう。その場合、まずは音と1つの「通話」ボタンをとりあえず15日間で市場に導入するという感じです。まずは市場に発表し、顧客からのフィードバックを得ながら、次のステージに取りかかるということを同時にするのです。売上はすぐにたち、顧客の声を参考にしながらすぐに次の機能を開発するのです。」

ITチームにはコミュニケーターやコラボレーター、そして、クリエイターが求められている。

細部にまでこだわることに時間を費やすことに慣れてしまっている中で、「アジャイル」によってその行動様式は抜本的に変化せざるをえない。問題を生み出しているのは人間で、この場合に必要になるのがよりインタラクティブなチームの存在である。理想的な「アジャイル」環境とは、チームメンバーが同じスペース内で働くということだ。それによって仕事のスピードを落とさずにお互いに学べるからだ。メールの返信がない、誰かが休暇中だということでプロジェクトを遅らせるわけにはいかない。「アジャイル」型プロセスとは、このように仕事の視覚化と透明性が図られなければならない極めて本質的かつ集団的な工程とも言える。

「それは企業カルチャー、人的資源、スペース、テクノロジーの融合で、それらが全て揃わなければならないのです。テクノロジーを買ったとしても、買うだけで活用されないで終わってしまうことはないでしょうか。それを活用するために、適切な企業カルチャーや十分で適切なスペースを提供することが必要になるのです。」とPalacios氏は述べている。

今や、テクノロジーは私たちのワードローブの一部のようだ。服やスマホなしで外出することはできないように、テクノロジーは人々の生活の中に深く浸透し、ユーザーの期待度も大きく変化している。

人々がどこでどう働きたいかをチョイスできる異なるスペースを考えることだともPalacios氏は語っている。大人数でのミーティング、テクノロジーを活用しながらのペアでの作業、ひとりでの集中作業、少人数での反復作業などを可能にする「場」である。

Mortimer氏はこう語っている。 「デジタル変革が進むにつれて、企業リーダーたちは、デジタル化に伴い、企業カルチャーや労働力をシフトさせながら、どう従業員の力を最大限に発揮させるかを再考する必要があります。それにはまず、すべてのワークスタイルを支援する職場環境づくりから始めることです。つまり、可動性や柔軟性に富み、デジタルインテリジェンスを活用しながら、そこでのワーク体験が向上し、組織、人、情報が安全に維持されるスペースということです。」

このことはLenhardt氏が考えていたことでもある。今日の高度なスキルが混在するグローバルな職場環境の中で、多くの人が最高の仕事ができるスペースを求めている。激しい人材獲得競争の中で、職場環境は人を感動で魅了し、温かく迎え入れるものでなければならない。何故なら、多くの企業がハイエンドスキルを備えた人材を求めて、シリコンバレーのようなトップ企業たちと競争することになるからだ。

「今後、チームが直面している課題に応じて、いかにチームをまとめ、彼らが最高の仕事が出来るようにどう働く場所を柔軟にコントロールできるようにすればいいですか?」とLenhardt氏に尋ねると、「考慮すべきことがたくさんあります。適切に対処すれば、そのリスクは決して高くありません。」と彼は答えた。


デジタル化やデータの活用は果たして売上につながるのだろうか?

それに成功している企業例のいくつかをここに紹介しよう。

1. ラ・リーガ
ラ・リーガはスペインのトッププロサッカーリーグでその視聴者数は週に21億人である。人工知能とクラウドサービスにより、ファンは好きなチームや選手を選び、関連コンテンツや動画、データ、統計を視聴できる。

2. テトラパック
食品用紙容器の開発・製造メーカーであるテトラパックのサービスエンジニアは、マシンの故障を遠隔からでも迅速に診断するためにホロレンズのヘッドセットを使用している。デジタルツールとクラウド接続機能を持つマシンは、設備のメンテナンスのニーズを予測し、コストのかかる故障を回避している。

3. デルタ航空
19,000人の乗務員にモバイル機器を持たせるというモバイル戦略を採用し、機内での購買を促し、収益を増加させている。

4. ボーイング
資産追跡テクノロジーを導入し、数十億もの部品を監視している。 「貴重品」とラベル付けされた各部品のタグによって、アイテムの正確な位置が特定され、部品を捜すための時間とコストの削減に成功している。

5. ジェネラルモーターズ
リモートモニタリングは、問題が発生する前のリスク回避に役立っている。 Nielsenによると、自動車メーカーは監視、診断、厳しい管理体制によって中断時間を大幅に縮小し、毎分15,000〜50,000ドルのコストを削減できる。

6. 全米プロバスケットボール協会
ボールと選手にセンサーをつけることで、NBAのコーチと選手はどのゲームが最も良かったかの解析が可能になった。

7. シカゴ市
600以上ものデータ機能は、緊急時や大規模なイベントの問題をリアルタイムで予測し、そのための準備ができ、問題解決に大いに役立っている。

8. コペンハーゲン市
リアルタイムの照明効果と駐車管理体制により利便性が大幅に向上し、混雑を減少させた。また、都市のインフラ接続を適切に計画することで、CO2排出量の削減に成功している。

9. ブリティッシュ・コロンビア大学
ビルコントロールシステムとWi-Fi解析を連携させ、ガス排出量を33%削減し、年間20万〜40万ドルに相当する5%の省エネ効果を達成した。

10. ケイ・オプティコム
日本の大手電気通信会社のケイ・オプティコムは、次世代のメニューと徹底した加入者管理システムを導入して、競合他社の3分の1の低コストでデータサービスプランを提供している。

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