それは、火事から始まった。
360本号では、今までとは異なる全く新しい方法で問題を解決するイノベーション事例をいくつか紹介している。実際、私たち、Steelcaseは100年以上も前からその姿勢を一貫して貫いてきた。
今ある全ては、火事と車から始まった。
1900年代のオフィスといえば、決して安全ではなかった。建物は木製で書類がすべて紙であったあの時代、火事につながるなどと全く考えもせずに紙タバコの吸い殻を籐製のゴミ箱に捨てていた。そして、都市が繁栄するにつれ、オフィスの火事は深刻な問題になっていった。
その一方で、20世紀初頭のイノベーションは自動車産業の発展に支えられていた。あの時代に画期的なアイデアとして登場した技術のひとつが鉄を曲げて様々な製品を成形するというものだった。
金庫の製造で起業していたPeter Wege氏(後にSteelcaseを創業)は、当時としては斬新なアイデアを持っていた。「燃えないゴミ箱をつくれないものだろうか? タバコの灰から火事になるのはもう沢山だ。」と考えていた。一見、シンプルに見えるこういう発想が大きなイノベーションにつながる。つまり、今までとは異なる方法で問題を解決するということだ。
Wege氏と米ミシガン州グランドラピッズ市の小さな思想家グループによって1912年に設立されたのが、現在のSteelcaseの前身「メタルオフィスファニチャー」という会社だ。ほとんどの家具が木材で作られていた時代にWege氏はゴミ箱など様々なアイテムを金属で製造することを模索し始めていた。そのひとつが書類の炎が上がらないようにする耐熱性と品質を備えた スチール製収納キャビネット だった。その後、同社はSteelcase(スチールケース)に名称を変更している。
創業以来、取り巻く環境に応じて大きく変化を遂げていったSteelcaseは、高い開発力と知識で常に市場の声に耳を傾け、学びながら思い描く世界をグローバルに展開する企業へと成長した。永続的に廃棄されないデザインや素材に挑戦し続け、現在、未来において働く「人」が真に必要とするものを常に探求し続けている。その中で働く「人」を常に事業の中核に位置づけ、働くことを楽しめるようなイノベーションを追求し続けるという一貫した姿勢は時代がどう変わろうと変わらない。