少ないモノで、多くを成し遂げる
どう制約を味方につける
どう制約を味方につける白紙症候群というのが現実にある。ゼロから何かを生み出すことは苦しい作業である。
幸運なことに、人間は挑戦をするように脳に組み込まれている。 例えば、パズルを解決した時の喜びもそうだ。厳しい制約が人間の創造性や生き残り本能、そして、高度な問題解決や論理スキル力を発揮させるのだ。ツールもそのためにある。周りを見渡すと、私たちはしばしば問題を解決している時に一番創造性を働かせているのが分かる。
厳しい制約が人間の創造性や生き残り本能、そして、高度な問題解決や論理スキル力を発揮させるのだ。
厳しい制約が人間の創造性や生き残り本能、そして、高度な問題解決や論理スキル力を発揮させるのだ。また、宇宙空間でも、この創意工夫が要求されている。NASAの宇宙飛行士は、月面車の壊れたフェンダーをダクトテープで貼り付け、宇宙遊泳をしながら改造された歯ブラシを使って固着したパワーモジュールを修理している。1973年、NASAは太陽サンシェードを急いで一晩で準備し、翌日には修理のために宇宙飛行士をスカイラボまで飛ばせた。企業はこの俊敏性から多くの事が学べるはずだ。
この制約された何もない環境が創造性を高めていく。デンマークのコペンハーゲンで始まった地産食材のみで調理するロカヴォア(locavore)料理の聖地であるノーマ(Noma)という地元のレストランでは、ノルウェーの大地で育ったサムファイヤーという野草やビーチビーツ、アサガオなどを原料とする飼料や材料から作られた珍味を特色とするメニューを開発している。それには昔の北方ゲルマン族が食べないものもある。例えば、珍しい燻製骨髄、大アリ、ナマコ、地元で獲れる魚などを使った料理の世界に人々は魅了されている。
アーティストやデザイナーは制約がもたらすメリットを深く理解している。また、経済的制約も創造的な問題解決と独創的なアイデアにつながっている。
アメリカのレコードレーベル、モータウンレコード(MotownRecords)は、売り上げ向上のために、専属バンドとソングライターのチームを編成し、効率性と品質管理のためにオフィスの2階でレコーディングを行っている。独創的なエンジニアたちは、複雑なレコーディングにアナログ技術を最大限に活用し、他にはないアイコン的サウンドを世に打ち出した。
パンク・ロックミュージシャンは、チラシ用に安価で入手可能なゼロックスアートとコラージュを活用して、レコードのジャケットを自作デザインし、DIYを実践し、その発想を広く浸透させた。
建築家のRichard Meier氏は、この制約を「機会」と表現し、常にそれに取り組んでいる。