未来のオフィスは、複数を組み合わせたハイブリッドモデルへ。これはコラボレーションの仕方も同様である。 グローバルカンパニーの68%が従業員の一部をオフィス、または自宅や第3の場所で働かせるというハイブリッドワークの実験的導入に乗り出している。オフィスワークを主とする企業でさえ、関連企業や調達先、顧客先とのコラボレーションがハイブリッドになることも十分にありえる。つまり、私たちは、これまで以上にさまざまな場所に分散しながらコミュニケーションやコラボレーションをすることになるだろう。
世界のリーディングカンパニーは、本格的なオフィス再開にあたり、生産性を最大限に高める目的でハイブリッドコラボレーションを劇的に増やす方向に舵を切っている。これらの企業は、イノベーション創出と成長を牽引するのは集団としての結集力と共通の目的に向かって突き進む情熱であると認識している一方、それが困難な場合には在宅勤務を希望する人が増えるだろうとも予測している。
ハイブリッドコラボレーションを成功に導くスペースづくり
スペース構築に向けてのアイデア満載のガイドブックを参考にしよう。
複雑さが絡み合うハイブリッドコラボレーション
「これからのオフィスはビデオ通話が主体になります。私たちはその多くの時間をカメラアングルやコンテンツストリームの調整に費やすばかりで人とのつながりが置き去りになっています。なんとかその環境をもっとシンプルに使いやすくしなければなりません。以前から私たちが直面していた問題はコロナ禍で加速する一方なのです。それはマスク着用や距離の確保といった単純な問題ではないのです。」と語るのはハイブリッドエクスペリエンスを15年間研究しているSteelcaseのデザインマネージャーであるジェシー・ストーレイ氏だ。何がどう複雑なのだろうか:
不公平な環境 – リモート参加者の環境はオフィスにいる人とは大きく異なる。環境不備のために視聴環境が悪く、作業効率や快適性に悪影響を及ぼしている。この環境格差の主な原因はリアルとネット両方の環境やデジタルツールの不備によることが多い。
非言語情報の読み取りにくさ – オンラインでは相手の表情や感情、周囲の様子や反応、空気感を読み取りにくい。
意欲の欠如 – オフィス、リモート両方の参加者が公平にコンテンツを共有することは極めて困難である。リモート参加者は誰がホワイトボードに書いているかがわかるだろうか?
イノベーションへの弊害 – ゼロから何かを生み出すコラボレーションは最も難しいと言われている。活発に動きながら意欲的に参加することが創造性を高めることになる。オンライン上でそれを実現するのは難しい。
プロジェクトルームに隣接してソファ席やOrangeboxのOn the QT (オン・ザ・キューティ)ポッドを配置することで、会議前後の時間を利用して対面、オンラインでの同僚とのフォロアップもしやすい。
マーカーボード前に配置したSteelcase Roam(ローム)モバイルスタンドとSurface Hubを使用しての同僚とのコラボレーション。テーブルは可動式なので視界やコンテンツを見やすい位置に動かしやすい。リモート参加者を考慮してコンテンツのクローズアップや広角ルームビュー機能搭載デバイスを利用することが望ましい。
ハイブリッドな未来 + BYOD
企業が新たな働き方を試す際、ある部分は極めて流動的と考えられる:例えば、ビデオ通話の参加人数、コラボレーションスペースの共有や利用方法、ハード機器やソフトの種類によるなどその不確定要素は多い。
オフィスでの
コラボレーションは
BYODも念頭に
69%
業務に個人所有のデバイス、または個人所有と会社の統合システム両方の利用を計画している企業の割合
出典元:2021年3月に世界を対象に実施したオフィス再開意識調査
(注:調査対象国8か国のうち、中国企業は個人所有デバイス、または個人所有デバイスと会社の統合システム両方を利用する可能性が最も低く、48%に留まる。)
ハイブリッドな未来やBYOD(個人所有デバイスの業務利用)モデルへのシフトは確実だろう。BYODに関して言えば、スマホなど個人所有デバイスはすでに業務利用されているところも多い。さまざまなハードやソフトを組み合わせながら統合することで、より簡単により効率的につながることができるようになる。
多種多彩なスペース + テクノロジー
ハイブリッドコラボレーションとは、予定されたクリエイティブセッションから偶発的な1対1のコミュニケーションや雑談まで広範囲にわたる。この多様性を受容するハイブリッドワークを実現するには、多種多彩なスペースとテクノロジーの提供が鍵になる。「重要なのはデジタルとリアルの融合です。リモートの人の環境だけでは不十分で、オフィスでのより上質なバーチャル環境を整備することが重要になります。それにはカメラや音響、コンテンツ表示、照明などを念頭に慎重にスペースを設計しなければなりません。」とストーレイ氏は語る。
「リモートの人の環境だけでは不十分で、オフィスでの上質なバーチャル環境の整備が重要になります。」
ジェシー・ストーレイ Steelcaseデザインマネジャー
ハイブリッドコラボレーションを成功させる3つのポイント
Steelcaseは、研究員、設計デザイナー、ITエクスパートからなるチームを結成し、距離を超えてグローバルに働く分散型チームの環境構築に関する研究とそのソリューション開発に10年以上も費やしている。そこで集積された莫大な知見によって未来像を明確に描き出すことに成功している。そこにあるのは、高性能なスペースで多種多様なテクノロジーを駆使し、リアルとネットを融合しながら日々コラボレーションするチームの姿である。
公正性 – 全ての従業員が尊重され、受け入れられるエクイティ(公正性)とインクルージョン(包容性)を追求する。
自発的貢献 – 人間を主体とした魅力ある多彩なスペースを提供する。
手軽さ – リアルとネット/デジタル両方の「場」で直感的かつ使いやすい環境を設計する。
公正性
同じ場所にいないことから起こる環境格差をなくすように設計する。
- オフィスとリモート両方の参加者がその空間の中で自由に動ける環境を創出する。例えば、家具や表示ディスプレイを可動式にし、状況に応じて動かしながら環境を調整できるなど。リモート参加者の顔がいつもコンテンツの端に表示される必要はない。
- 新たに結成したチームの場合は、共有、個別両デバイスのカメラを使用する。その場合は、共有デバイス(ルームビュー)がプライマリ、個別デバイスはセカンダリに設定することが望ましい。
- カメラ、タスク、周囲の照明を考慮することでビデオ通話はさらに快適になる。ビデオ通話には頭上から横に振る温かみのある明るさのLED照明が適している。
- 両端の参加者同士の声がはっきり聞こえるようにスペースのサイズ、仕切り、素材、マイクやスピーカーの位置を慎重に検討する。
- 適切なマナーやルールづくりを整備する。(ハイブリッドコラボレーションガイドブックへ)
自発的貢献
スペースとテクノロジーを駆使しながら分散している参加者全員が自然なカタチで公平にコミュニケーションできる雰囲気を創出する。
- デジタルとアナログ両コンテンツを適切に配置して、リモートを含む参加者全員が公平に参加できる環境をつくる。一部のソフトウェアプラットフォームや統合テクノロジーシステムは複数のディスプレイを利用して人とコンテンツを別々に表示できるため、リモート参加者も公平に参加できる環境を整備しやすい。
- カメラの視野角度(画角90度と120度)を念頭に設計し、リモート参加者が人やコンテンツの両方を見ることができるようにする。 AI搭載ウェブカメラの広角を利用してアナログコンテンツを表示できるようにする。 Huddly社の Canvasコンテンツカメラは、Microsoft TeamsやZoomを念頭に設計されており、グリアや影を排除しながらマーカーの色を際立たせたり、カメラの前にいる人を隠しながらホワイトボード上の情報をより鮮明に表示できる。
- デジタル、アナログ両方の情報表示を可能にし、複数でコラボレーションができる共有コンテンツ編集ツールを利用する(例:デジタルホワイトボードまたはMuralのようなオンラインホワイトボードツールなど)。
手軽さ
複数のインターフェースや画面、タスク間でのシンプルかつシームレスな移行を可能にする。
- 共有デバイスは個別デバイスと簡単に接続でき、必要に応じて両方を使ってメンバー同士が対話できるようにする。
- オフィスとリモート参加者の両方が全員の姿とコンテンツを鮮明に見ることができるようにする。家具やデバイスを可動式にすることで会議の進行に合わせて柔軟に動かしながら会議の様子がはっきりと見えるように調整できる。
- さまざまなデバイスやソフトを組み合わせてテクノロジーを連携させる。企業は1つのプラットフォームを利用しがちだが外部接続が不可欠なチームは多種多様な方法を求めている。
可能性溢れる未来
テックリーダーの Microsoft や Zoom などは、信じられないほどのスピードでハード、ソフト両方の拡張機能をリリースし続けているように、ハイブリッドコラボレーションはこれからも進化し続けるはずである。
Microsoft Teamsは、Bluetoothビーコンを使用して近くの空いているスペースを探し、ハンズフリーで会議に参加できる新たな近接ベースの会議参加機能をリリースした。1つのスペースで複数のTeams RoomsデバイスまたはSurface Hubにカメラ、スピーカー、マイクを配置できるミーティング体験を展開している。スペースに自動予約や自動解放センサーテクノロジーが搭載されている場合は、文字通り部屋を非接触で予約して会議に簡単に参加できる。また、Microsoftは、リモート参加者の仮想アバターや壁面コンピュータというような先を見据えた新たな未来も描いている。
「私たちに見える未来は、すべての表面(Surface)がインタラクティブなコンピュータになります。ですから敢えてSurfaceという言葉を製品名につけたのです。つまり、未来のコンピュータは、ガラスや石膏ボードのような建築材になるのです。Steelcaseとの協業が非常に重要なのはそのためです。お互いの強みで協業することで必要な時に、必要な場所で、瞬時に仕事ができる環境が生まれてきます。それこそが未来の働き方、未来のオフィス、未来のコンピュータの姿なのです。」と語るのはMicrosoftのWindowsとデバイスのテクニカルフェローのスティーブン・バチッシュ氏である。
また、Zoomは、ユーザーと顧客が未来の働き方で成功するためにツールを進化させ続けている。ユビキタスな会議ソフトウェアであるZoom Roomsには、拡張音声コマンド、参加者の顔を独自のフレームで表示できるスマートギャラリービュー、会議時以外でも利用できる電子ホワイトボードなど多彩でユニークな機能が満載である。
「私たちは、リモートとリアル両方の場で各チームメンバーが公平に会議に参加できるような機能の開発に積極的に取り組んでいます。」
シンシア・リー Zoomリードプロダクトマネジャー
「当社は、リモートとリアル両方の場で各チームメンバーが公平に会議に参加できるような機能の開発に積極的に取り組んでいます。例えば、人とコンテンツの表示を分離すること、リモートからリアルな場がどう見えるのか、会議を超えて人はどうコンテンツと関わるのかなどを調査しながら当社のプラットフォームが会議室でどう機能し、どう改善すべきかを追求し続けています。」とZoomのリードプロダクトマネージャーであるシンシア・リー氏は語る。
試験的運用、従業員参加、そして、軌道修正
今までにない新たな方法でのコラボレーションを試し始めると、オフィスやテクノロジーはさらにその進化を加速させていくことになる。リアルとネット/デジタル両方を融合しながら試験的に運用してみることは新たな何かを生み出す絶好の機会である。そして、従業員に参加を促すこと。それは一方的な押しつけではなく従業員の意見を反映させるという企業と従業員の対等な関係性を示すことにもなる。そして、上手くいかなかった場合には軌道修正すること。ハイブリッドワークを導入するということは、働き方やその環境、業務プロセス、そして、そこでのルール等も同時に調整しなければならないということである。これからの不確実な変革の時代にあって、あらゆる変化やニーズに対応しながら柔軟に進化し続けるオフィスは、競争優位性を保ちながら成長し続けるプラットフォームになることは間違いない。
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