コラボレーション

Vodafone: ハロー・アムステルダム

所要時間 8分

新たな企業文化とワーク環境への移行を周到に準備する

 

多くの企業がグローバル化やモバイル化に対応し、コラボレーションワークを容易にするビジネスモデルを適応しようとやっきになっています。しかし、これらの変化を成功に導いている企業は未だ少ないともいえます。成功している企業のひとつが世界のモバイル通信市場をリードするVodafone社です。新たなワークカルチャーを育てるにあたっての不可欠な要素、それは同社のスペースデザインへのクリエイティブなアプローチ方法でした。

同社が本社をアムステルダムに移転させる計画をする際に、経営陣はコラボレーション型ナレッジワークをサポートするオフィスづくりを目指しました。つまり、モバイルなワークスタイルを実践できる「場」のパワーを活用したワークプレイスの創造と、優秀な人材を確保し、ワークプレイスを通して企業ブランドを表現したいと考えたのです。

同社はSteelcaseのワークプレイスのグローバルコンサルタント集団、ARCチームと組み、変化を伴うワークカルチャーとオルタナティブワーク戦略の実践を成功に導きました。まずは、移転前のプロセスとして、Qportでのテストサイトの構築で、そこでワークプレイス戦略を実際に実践し、修正するというものでした。

オルタナティブワーク戦略には不動産を最大化し、従業員の生産性を高める方法でのモバイル化やワイヤレステクノロジー、そして、ナレッジワークをサポートすることなどが含まれていました。しかし、今までに実践したことがないこれらの方法は組織の大きな変更を伴うもので、組織としてどの程度までの変化を受容できるかということが大きな課題となりました。

“従来のオフィスではなく、今までにないフレッシュで異端的、そして、未来に向かって大きなステップになるワークスペースが必要でした。”

Jens Schulte BockumCEO of Vodafone NL

「多くの企業は組織の見直しや変更への準備ができていません。そして、この種の変更を真から望む企業にとっては下記の4つの前提条件をクリアしなければなりません。」と述べるのはSteelcaseのARCチームの代表であり、今回のVodafone社のプロジェクトに従事したJohn Hughes氏です。

  • プロセスへの経営陣の積極的な参加
  • あらゆるレベルでの従業員の参加
  • 実行前に検証可能なワークプレイスソリューション
  • 移行プロセスを徹底的に管理

同社の経営陣と社員と協力しながら、ARCチームは独自のユーザーエンゲージメントツールを使用して、会社が果たしてワークプロセス、テクノロジー、人材、ワークスペースの変革を受容できるかどうかの診断を行いました。

主なプランニングプロセスの要素はARCが主導するインタビュー、アンケート、ワークショップを通して従業員の意見や情報を集積することでした。「従業員が組織全体に関与することで、私たちが提案したことが正しいかどうかをチェックすることができました。さらに重要な点は、デザイン戦略と移行計画を決定する際に、この会社の変革に対する従業員の理解を深め、賛成意見を増やすことにもつながりました。」とプロジェクトを率いるVodafone社の人材、プロパティ、セキュリティ担当部長のPaul Smits氏は語ります。”

ARCは会社のステークホルダーの方々から見た企業文化や個性に関して詳細に調べあげ、理想的なカルチャーを明確にし、経営陣と従業員の間の期待のギャップを特定しました。両方ともイノベーションに力を入れ、効率性よりも効果に価値を置き、もっとチームワークを助長し、マーケット主導のカルチャーを重視しないという点では共通していました。また、ワークプレイスに関しては以下のような点を反映したスペースが求められていました:

  • コミュニケーションとコラボレーションを促進する
  • Vodafone社の製品やモバイルワークを見せることでブランドを表現する
  • 地域の雰囲気を創造する
  • 相互交流のためのソーシャルなスペースを提供する
  • 豊富なカラーや採光を考慮する
  • 健康的なワークスタイルをサポートする
  • 感動できる「ワオ!」要素を取り入れる

ARCのツールやプロセスを通して得られたインサイト、同社のグローバルなスペース基準やグローバルな不動産グループからの意見なども考慮にいれながら、チームは今までにない新しいワークプレイス戦略を立案しました。

「ワークプレイスを変革し、新しい働き方を試みることは目的地ではなく、それは継続する旅のようなものです。私たちは世界中の事業体からもいろいろ学んでいます。アムステルダムでうまくいくものが必ずしもドイツやチェコスロバキアで成功するとは限らないからです。グローバルの保有不動産の情報を社内に集積し、お互いに利益があるようにプロジェクトに生かしています。」とVodafoneグループプロパティ部長のBilly Davidson氏は述べています。

私たちの新しいスペースはワーキングオフィスでありながら、今後2年間の間にアムステルダムの最終オフィスとして開設するテストオフィスでもあるのです。

効果的な移行を成功させるには組織を変革することが不可欠であることはいうまでもありませんが、同社のプランは下記のような多くの戦術を含み、その達成は決して容易ではありませんでした

  • 従業員用のウェブサイト、www.IamGoingToAmsterdam.comを制作し、アムステルダムへの移転に関しての情報を定期的にアップデートする
  • 全従業員がアムステルダムを視察する
  • 従業員への移転サポートを提供する
  • 正式なオープニングの1ヶ月前にソフトオープニングを実施する
  • 全従業員とその家族のためのオープニングイベントを開催する
  • 「スピードデイティング」と呼ばれるセッションで従業員が経営陣と話す機会を設ける。
  • 「スピードデイティング」と呼ばれるセッションで従業員が経営陣と話す機会を設ける。
  • ビデオ会議、スマートボード、電子スケジュールデバイス、新ソフトウェアなどに関するトレーニングを提供する
  • ツアーの実施、アムステルダムのガイドブックの作成、様々な企業、ワークプレイストピックの情報をダウンロードできるイントラネットサイトの構築など、オリエンテーション用ツールを計画する

「ハロー、アムステルダム」と名付けられたマーケティングキャンペーンを移転プログラムと同時期に実施し、フォンデル公園、アンネフランクの家、パラディーゾ、ライツエプレインなどのアムステルダムのアイコン的スポットに仲間入りをする注目すべきスポットとしてアピールしました。キャンペーンはオランダの首都での存在感を確立し、新たな人材の獲得、社内のモラル向上、話題性という点で多いに効果を発揮しました。

同社の移転に際してのQPortでのテストスペースの構築はその劇的に異なるスペースを従業員に理解してもらうという意味ではその目的を見事に達成しました。その内容は自席の廃止、オープンなコラボレーションスペースの採用、肩書きに関係なく、全員が同じワークスペースで働くという画期的なものでした。

「驚いたのは移転当初からとても働きやすいと感じました。それは想像していた以上に快適で自然に身体が受け入れるというものでした。」と語るのは従業員と同じスペースで働くCEOのBockum氏でした。

「人間関係が蜜になったように思います。問題があってもすぐに話せる環境がそこにはありました。以前の環境よりもインフォーマルなコミュニケーションが増え、生産性が上がりました。重要な情報の共有も容易で、会社で何が起こっているかもすぐにわかります。」

QPortのテストサイトでは従業員にとって重要と思われる課題も体験できました。例えば、それはオープンでインタラクティブなスペースであったり、カラフルで自然光溢れるワークスペースや驚きや感動を与える空間づくりというものでした。QPortでの一人当たりの平均面積は約13平方スクエアメーターで、Vodafone NLの不動産面積を劇的に減らしました。

この新オフィスは国内外から評価が高く、「進化する革新的ワーク環境」としてグローバルな不動産サービス会社、Lang LaSalle社の2011年のワークプレイスアワードを受賞しています。

外からの評価はもちろん、QPortは会社の最終的な拠点となるためのテストスペースという重要な役割を担っていました。「私たちはQPortでの人々の新たな行動を観察し、企業文化の変化を促しています。従業員の話を聞き、新オフィスをより良くするアイデアを集積しています。」とSmits氏は語っています。

「同社のグローバルな不動産ポートフォリオと合体させたQPortでの私たちの学びは最終的な移転先ではっきり立証させるでしょう。しかし、基礎となる定義や哲学はかなり信頼できるもので、修正は少なくてすむことは確かです。」

“要するにオフィスに足を踏み入れた時にどう感じるかです。2、3日するとそれが果たして正しかったかどうかを実感するはずです。私たちは詳細に練られたプランと変革をやり遂げるプロセスを確立しましたから。”

Jeroen HoencampDirector Business Unit Enterprise, Vodafone NL

“すべての従業員を巻き込むことで、会社全体が大きな変化もより受け入れ易くなります。”

Paul SmitsDirector of Property, HR & Security, Vodafone NL

 

アプライドリサーチ + コンサルティングサービス

経営層へのインタビュー
経営層や従業員対象のワークショップ
オンラインアンケート調査
文化分析
デザイン意図と戦略開発
デザインソリューションのためのモックアップとオフィスのパイロット版の作成
評価ツール
変革管理:ワークショップの測定、オリエンテーション、コーチング

製品

Steelcase® Actuno スペースシステム, Think and Westsideチェア
FrameOne、Tenaro デスク, and PolyVision® Walk-and-Talkインタラクティブホワイトボード

 

プッシュ・トゥ・トーク:コールセンターを定義する

同社はイギリスのストーク・オン・トレントの一箇所に3つの独立したコールセンター機能を持ち、全体の不動産を10%削減された革新的なワークプレイスを構築しました。

さらにこの施設が従来のコールセンターと劇的に異なる点は、スペースの圧縮度です。同社はブランドを反映した効率性の高いスペース、チーム間のコラボレーションを加速させるスペース、将来のニーズの変化にも柔軟に対応するスペースづくりを目指しました。それが最終的には従業員の生産性を向上させ、顧客へのより良いサービスを達成することになるものと確信していました。

SteelcaseのApplied Research & Consultingチームは同社のチームと共同で、ワークプロセスを観察し、従業員からの意見を集積し、戦略に反映させるという施策を講じました。「私たちはお客様へのワークショップを開催し、対話を重ね、彼らにとっての理想のワークプレイスの試作モデルをつくりあげました。」

この完成したワークプレイスは彼らからのフィードバックやアイデアを具現化した製品ともいえます。それは全体のデザインはもちろん、細かく言えばデスクのレイアウト、仕事から離れた静かな安らぎの場所、従業員が毎日建物に入る際に通りすぎるカラフルなエントランスだったりします。

現在、900名が建物を使用していますが、最終的には下記の機能を有した1200名まで収容できる建物になる予定です。

  • 素早く再構成できるオープンレイアウトのワークスペース
  • ワークステーション、個室、トレーニングルームは上げ床式
  • あらゆる体格に適した人間工学チェア
  • パンチメタルルーフ、アコースティックバルコニー手摺、デスク上のスクリーン
  • などで音響を調節
  • 2つのタイプのブレイクアウトスペース
  • 大小さまざま、多種多様なミーティングスペース
  • 共有のキッチンエリアとレストラン
  • 一人当たり8平方メートルの平均面積。
  • コールセンターは約6平方メートルの床面積。

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