デザイン

驚きと感動

意外な魔法でデザインの未来を牽引する

所要時間 4分

John Hamilton、グローバルデザインディレクター、Coalesse

私にとって興味深いことは、モノの価値もそれを選ぶ理由も人によってさまざま。他のモノと比較してディテールや素材、予想外の解決法に対して求めるものが個々に違うということだ。

デザイナーとして、私たちは常に選ぶ側のこういった視点を念頭に置いている。スペースやチェア、テーブルのどんな些細な違いがユーザー体験を喜びへと変え、人の記憶に焼きつけるのか? 人、スペース、そして、世界と効果的に繋がるにはどういった要素が必要なのか? 人を健康でハッピーにし、仕事へのやる気を上げるにはどうすればいいのか? デザイナーという仕事は、ユーザーを奮い立たせチームの問題解決にどう役立つのか?といった自問自答の連続である。

そして、その答えも常に変化する。当社の話をすれば、かつて耐久性は製品の絶対的差別化要因だった。しかし、今はどうだろう。人間工学、調節機構、豊富なチョイスや販売地域などその要因は幅広い。そして、そこに新たに加わったのがサステナビリティだ。現在の標準製品にはこうした数え切れないほどの基本的要素が最初から組み込まれているのだ。

だとするとその上に新たに社会から注目される何かを付帯するとなるとそれは一体何なのだろう。それは製品の個性とクラフト感だと私は考える。製品を初めて体感した時に「なんだ、こんなものがあるとは知らなかった。確かにこれはいい!」と思わせることなのだ。「わー、これがあると本当に気分がいい。」と言われると何か少し突破できたような気持ちになるものだ。ユーザー体験を向上させる何かを見つけたという満足感だ。それが全く予想もしていなかった方法だったりするとその喜びと感動は計り知れない。

Coalesseは、製品開発の際にこういったことを常に真摯に追求しているブランドである。問題を観念的に解決することから、明確な個性を持った家具ブランドへとどう転換させていくかの答えはここにあると考えている。デザイン重視のブランドとしての今までの実績がそれを物語っている。

オフィスにようやくデザインや雰囲気が重視され、企業の独自性や個性の表現が求められる中で、オフィスに出社した際に人は一体何を必要とするのか、最適で快適なスペースとは何かを感じとる第6感ともいうべき感覚をデザイナーは鍛えなければならない。

人の行動の中に閃いたりニーズを見出したりした時にはいつもそれはイノベーションにつながってきた。例として挙げれば、カーボンファイバー製のLessThanFive(レスザンファイブ)チェアだ。その軽量さを語る度に誰もがそれを実際に持ち上げて感動したものだ。

品質を維持するためには実際はそんなに軽量でなくてもいい。ただ結果としてそれが非常に喜ばれ、人々の反応として記憶に残るプロダクトとなっただけだ。このような予期せぬ発見がモダンクラフトの画期的な素材や洗練されたツール、新技術によって生まれることが多いのも確かである。クラフトとはアイデアの発想をマインドからハンド(手)へと変換することでより優れたモノを作り上げる方法でもある。価値や個性、鍛錬や歴史の印として魂がそこに加わることでストーリーが生まれる。私たちは、全ての製品開発において「クラフト」をデザイン設計の重要な中核要素として位置づけている。

日々進化するテクノロジーに目を向け、今までにないモノを生み出すために独自のクラフト技術を磨くこと、そうすることでブランドとしての幅は今後も広がっていくだろう。最近のプロダクトはCoalesseブランドが結成された10年前には想像もできなかった方法で誕生している。

私たちは、職場環境に関する知識や実証済みのデザイン定義、多くの調査研究やテストを製品に反映させている。そうすることで職場において現在、未来と人が真に必要としているモノを開発できる体制づくりができるようになる。そして、人間の直感とクラフト技術によってそのモノづくりを発想力豊かかつ個性ある精神的レベルにまで高めること、それが私たち、Coalesseが目指すブランド像だ。企業としての目的は、あくまで人々の生活を向上させるようなデザインを追求すること、そして、職場環境を退屈な「場」から予期せぬ驚きや喜びに満ちた「場」へと変革することである。

Coalesse Design Group: Munich Studio

創業10周年を迎えるCoalesseブランド

デザイン重視ブランドとして10周年を迎えたCoalesseは、そのデザイン拠点をドイツのミュンヘンにあるSteelcaseのラーニング&イノベーションセンター(LINC)に移し、次の10年をスタートさせた。「今回の移転でアメリカからだけでなく、ヨーロッパ、中東、アジアパシフィック地域からも数々の優れたアイデアが集まるようになりました。」と、CoalesseゼネラルマネジャーのLew Epstein 氏は語る。

Coalesseデザイングループは、ミュンヘンにあるグローバルな基盤をベースに働き方の未来を探っている。内外の世界クラスのデザイナーと協業しながら、未来の働く「場」に新風を吹き込むクラフトベースの家具づくりを今後も目指していく。

関連記事

ハイブリッドワークで変わる
階層別ニーズ

ハイブリッドワークで変わる
階層別ニーズ

最新研究が示唆する働き方の変化と今後のオフィスの在り方とは。

ハイブリッドオフィスの 効果を検証する

ハイブリッドオフィスの 効果を検証する

ハイブリッドコラボレーションスペースのプロトタイプを試し、学んだこと。

協調に向けた対話とデザイン

協調に向けた対話とデザイン

メルボルンデザインウィークのアート&トークシリーズをSteelcaseが主催。