立ち上がる
Steelcaseとウエストミシガンのアート&テクノロジーセンター、WMCATは10代の若者の声を吸い上げ、公平に機会が与えられるよう活動しています。
企業が非営利団体と連携しながら地域コミュニティの社会的問題に取り組んでいるケースが増えています。 ウエストミシガンのアート&テクノロジーセンター(WMCAT)の社長兼CEOであるダニエル・ウィリアムズとSteelcaseのソーシャルイノベーションディレクターであるキム・ダブスの両者は、真の解決策を求めて企業として立ち上がり、単なる慈善活動を超えて積極的に活動に参加していくことの重要性を主張しています。
360では、不公平感や教育の改善、持続可能な都市や地域コミュニティの構築など差し迫った問題に対してどう連携しているのかを尋ねました。
360:WMCATの使命とは何ですか?それはソーシャルイノベーションとどう関連していますか?
DW:WMCATはミシガン州西部に拠点を置く非営利団体で、地域コミュニティの活性化を目指し個人の経済的、社会的成長を積極的に支援しています。対象は多世代で個人から家族全員までさまざまです。例えば、中学生や高校生にアートやプログラミングの実践的教育の提供から、高校を卒業したばかりの子供たちが就労するまでの期間に今後の方向性を発見する就労移行支援、さらには、失業した成人が生活資金のための就労に必要な能力向上のための訓練プログラムなどがあります。
これらに加えて、過去数年間に2つの会社を設立しました。アンブローズは、スクリーン印刷の会社で卒業から就労までの期間を利用して就労体験ができ、中小企業を経営するために必要なスキルを学ぶことができます。また、パブリックエージェンシーは、デザイン思考コンサルタント会社で全米の企業に対して問題解決や地域コミュニティの革新的な思考や解決策を提案しています。これらの活動は当社が企業としての使命を全米レベルに認知させ、その役割を果たすだけでなく、事業をさらに成長させることにもつながります。
360:SteelcaseがWMCATと組んだ理由は何ですか?
KD:Steelcaseの従業員が暮らし、働く地域コミュニティを支援することは創業当初から当社の事業の中心にありました。数年前、西ミシガン地域が直面していた課題、特に教育や就労機会の格差という問題解決に対して企業としてどう支援できるかを議論し始めました。経営トップは公平な機会の創出において当社が果たす役割は大きく、是非積極的に支援すべきだとその提案を後押してしてくれました。
本社があるグランドラピッズでは、他の地域がやっていることを真似するのではなく、企業支援全体を変革するために独自の方法を見出すべきだと考えました。WMCAT内のチェンジメーカーと話し、教育、デザイン思考、発見やコラボレーション、イノベーションのための環境をデザインするという領域でWMCATの業務をどう効果的に遂行できるかでいかに協力できるかに重きを置きました。当社にとって、国家的モデルを変革し、ソーシャルイノベーションでのグローバルリーダーになる絶好の機会だと考えました。
360:そして、今、Steelcaseは世界中で同様の取り組みを行っていますよね?
KD:はい、そうです。最近のケースは、イスラエルのアッコ地域で当社が設計したスペースで多様な文化的、宗教的背景を持つ子供たちが学び、創造し、共に遊んでいます。まさに、それは理解と平和の「場」として機能しています。
私たちは、不平等や格差の削減、教育の改善、持続可能な都市やコミュニティの構築など差し迫った問題解決に向けて取り組むグローバルネットワークの一員であることを誇りに思っています。
私たちは自分たちの活動がどう影響するかを常に考えています。例えば、どうすれば収益につながるか? 働き方や職場環境をどう変革できるか?組織内でイノベーション文化を構築する際の当社の役割とは何か? パートナー企業として最大限に貢献できているか?そして、何より、その影響が前向きな変化を生み出す継続的な活動になり得るだろうか?ということです。
360:あなたはWMCATのアート&テクノロジープログラムをソーシャルイノベーションのプラットフォームと位置づけていると聞きました。それについてもっと教えてください。
DW:WMCATと聞くとほとんどの人がプロのアーティスト育成機関と勘違いされるのです。たまたまそういうことがあるかもしれませんが、私たちの意図は若者の就労を支援する方法としてアートとテクノロジーを活用しているだけなのです。支援プログラムを通して自分の心の声を聞き、方向性を発見するツールを提供すること、内なる自分と対話をし、表現し、他者と共有する「場」を提供することで自分自身で何か発見することにつながることが狙いです。WMCATが提供するものはあくまでもプラットフォームと言っているのはそういう意味です。
360:WMCATは人々の人生をどう変えていると思いますか?
DW:多くの変化を目の当たりにしましたが、ここではその一例を紹介したいと思います。2年前、動画制作スタジオにいた数人の子供が「グランドラピッズの音楽業界の人で有色人種はいるの?」という質問をしてきました。これをきっかけにグランドラピッズのアフリカ系アメリカ人の音楽の歴史を掘り下げる作業が始まりました。そして、結果としてドキュメンタリー映画プロジェクトに発展しました。多くの地元の人へのインタビュー、図書館や美術館のアーカイブでの資料の分析、そして、同時に人種差別廃止や地域社会の黒人経営の企業で何が起こっているのかについても学びました。ソウルシンガーのアル・グリーンがグランドラピッズ出身であることを知った彼らは、彼の高校の年鑑を探し出し、17歳の時にアルの家の地下室で録音をしたというアルの友人にもインタビューもしました。こうしたさまざまな出会いと発見がドキュメンタリー映画の制作につながったのです。
そのドキュメンタリー映画「リズムと人種」は、彼ら自身が学び、発見し、成長していく過程でもあり、それが映画としても完成したのです。これは決して偶然ではありません。若者としての旺盛な好奇心と心の声を表現できるツールが揃っていたからです。映画の完成後には街中の劇場でアーティストを招いての映画上映を開催し、さらに自信を得ました。その何人かはこの経験をさらに大きな果実にするために大学への進学を選び、将来へと大きくステップアップしました。
360:企業と地域コミュニティの連携しながら他者を支援することを成功させるにはどうすればいいですか?
KD:良きパートナーとなるには、まずは先方の話に耳を傾けることです。先方の意図を理解し、互いの強みをどう生かしながら共通の目標に向けてデザインし、プロトタイプを制作すべきかが分かります。地域の問題は地域で暮らす人の声が一番信用できます。
そして、実行に移すよりもはるかに深いレベルのコミットメントとプロセスが重要であることも私たちが学んだことです。ですから地域コミュニティと革新的な方法でコラボできるWMCATのようなパートナー、つまり、支援を受ける人の数ではなく、その人の人生にどう影響を与えるかをフォーカスした人間重視のプロセスを採用できる団体を探していました。
360: 最後に、次なる戦略は何ですか? ソーシャルイノベーションの業務を遂行する際にSteelcaseの先進性とは何だと思われますか?
DW:WMCATは、その使命を果たし、影響力を高め、進歩を拡大しながら活動を継続させていきたいと考えています。例えば、5年前の収入は私たちの総予算のたったの5パーセントでした。しかし、現在は社会的組織として認知され、その割合は30パーセントにまでに増加しました。まさに組織の持続可能性という意味では大きな飛躍です。
KD:Steelcaseでは、ソーシャルイノベーションが意義ある方法でどこでどう成功したのかを把握するためにその手法や考え方に主軸をおいています。すべてのパートナー組織で私たちが目にしているのは、目的と目的が日常の生活の中で果たす役割を共通の意識として持っていることです。例えば、目的という観点から私たちの地域コミュニティを動かすものは何なのか?目的を持って社会をリードできる方法を見出すにはどうすればいいのか?世界中の何千人もの従業員の間からそれを導く人材を配置するにはどうすればいいのか? 変革を促すような最強のパートナーになるにはどうすればいいのか?等を自問しています。
地域コミュニティでのSteelcaseの役割について考える時、組織内外での人間の可能性を解き放つような素晴らしいシーンを目にします。簡単なことなどひとつもありません。しかし、活動を継続させることで企業組織として成長し、より公平なより良い社会が実現する一翼を担える存在になれるものと信じています。
ダニエルウィリアムズ(Daniel Williams EdD)は、ウエストミシガンアート&テクノロジーセンター(WMCAT)の社長兼CEO。都市教育を専門とし、デザイン思考のファシリテーターとして公正なる教育や就労能力開発に取り組む。
キム・ダブス(KimDabbs)は、Steelcaseのソーシャルイノベーションとエンゲージメントのディレクター。機会を創出する文化的構築や意識改革を唱え、世界中の変革プロジェクトを主導する企業との提携に関わる。