画面越しが「集中力」を削ぐ
あなたはどれくらい長く集中力を保てるだろうか?ほとんどの人は、この記事を最後まで読むことはないでしょう。過去20年間で人間の集中力は30%強低下し、最近ではわずか47秒にまで減少しています。10年前、オフィスにおける騒音の最大の要因は周囲の会話でした。そして、現在、オープンレイアウトでのビデオ通話やオンライン会議がこの問題をさらに悪化させています。
集中力維持研究所の創設者であるD.グラハム・バーネット氏は、この状態を「脳の破壊」と呼んでいます。大声、騒がしい着信音、スマートウォッチのノイズなどそのすべてが人間の心を奪い、注意散漫に陥りやすくしています。スチールケースのグローバル調査によると、被験者の3分の2がノイズのせいで仕事に集中できないと答えています。在宅勤務でも同様です。子供、ペット、家事、さまざまな生活音が仕事の効率を妨げています。
“集中の中断”
集中力欠如は、仕事のパフォーマンスや健康にも悪影響を及ぼします。カリフォルニア大学のグロリア・マーク博士は、何十年にも渡って人間の集中力メカニズムとその持続時間について研究し、集中力の切り替えとストレスの間には直接的な相関関係があることを報告しています。心拍モニターを装着した実験では、マルチタスクでは血圧が上昇し、エラーにつながっています。集中力はスイッチのオン・オフの切り替えの結果としてパフォーマンスが低下し、一旦集中力が中断するとそれを再び取り戻すことは容易ではありません。
ディープワーク
「ディープワーク(Deep Work)」とは、コンピュータサイエンスを専門とするカル・ニューポート教授がつくった造語です。複雑なタスクにおいて、集中力が高まった状態で認知思考能力が最も高く、難題を迅速にこなすことができる状態です。そのためには、意識的に集中力を高める練習をすること、そして、注意力散漫を回避できる環境が必要だとも説いています。
注意力散漫を回避できる空間設計
注意力散漫を回避し、集中力を高めるには、働き方をあらゆる側面から考えることが必要です。オフィスが静かな時間帯や会議のない日など、また、カレンダーのタイムブロッキングや通知ミュート機能などAIの力を借りましょう。また、作業効率が上がる方法として注目を浴びているポモドーロ・テクニック(25分で区切って5分休憩を入れる時間管理法) も役立ちます。

私たちは、視覚や聴覚など周囲の刺激を通して空間を認識しています。この刺激によって行動が誘発されるため、「空間」は重要な役割を果たします。オフィスには集中を妨げる要素が多く存在します。間仕切りや壁を設置したり、観葉植物などを置くことで、周囲からの視線や音を遮り、空間を仕切って囲むことでプライバシーや心理的安全性を確保できます。
誰かが背後から近づいてくる不安を感じることなく、安心し、リラックスしながら仕事に集中できるようになります。未だ確立されていないのが室内音響設計です。なぜなら、すべて遮音すれば解決するという単純な問題ではないからです。「逆に完全な静寂空間では、話しづらくなります。私たちは空間中を伝搬する音波を感じとっています。ノイズがないと、空間のエネルギーやざわめきが失われてしまいます。よって邪魔にならないほどの少しの反響だけで生き生きとした自分を取り戻すことができます。」と語るのはサウンドアーティストのキルケゴー(Kirkegaard)の共同パートナーであるブレン・ウォーカー氏です。
ウォーカー氏は、音響設計においてまずはどの空間にどの音響特性が適しているかを定義することを推奨しています。誰がその空間を使用するのか、その空間に足を踏み入れた際にどう感じてほしいのか、何を聞き、どのように聞くのかなど、利用者のニーズに合うようにさまざまな音響空間を演出してみてください。
建物の構造や材質は音響に最も大きな影響を与える。天井が高いと音が反射し、エコーという現象が起きます。2つの平行な壁があると、壁面間で音が跳ね返ります。音響を改善するには、天井を下げる、壁を傾斜させるなど既存スペースの中の音響特性を改善してみましょう。その他の考慮事項:
- パーティションは、防音の役目を果たす。特に同僚の近くで集中して仕事をする場合には有効です。
- 材質によっては遮音性能を高めることができる。壁、床、天井、可動式パーティションなどの家具には吸音・遮音性の高い張り地や仕上げの使用を検討しましょう。
- 隣接関係が鍵になる。人が集うソーシャルスペースやプライパシーの高い集中力を要するスペースを設計する際には、隣接するスペースとの関係性を考慮しましょう。
- 音の風景とされるサウンドスケープは、室内に自然の癒しの音色をつくり出す。オフィス空間で演出することでストレス解消やリラクゼーション効果をもたらします。例えば、サウンドスケーププロバイダーであるムードソニック (Moodsonic) は、テクノロジーと科学を駆使した自然音をクリエイトしています。
- 静かな場所から活気溢れる場所までさまざまな感覚ゾーンを演出する。個々人の好みや感受性を満たすこと、そして、空間の目的を直感で感じられるようにその空間の音と空間の使用方法が一致していることが重要です。