垣根がない学習
教育と空間の役割を変革する:香港で開催の「Learning & Teaching Expo」のパネルディスカッションをSteelcaseが主催
(パネリスト左から右へ) Owen Pescod、John Mortensen、Dwayne Serjeant、Owen Tam
学生たちが将来のキャリアに向けた準備ができていると感じているのはチーフアカデミックオフィサーの96%にも及ぶ。しかし、それに同意する企業の経営者はわずか11%だ。その驚くべき数字は 2017年に発表された「Learning to Work and Working to Learn」 報告書の中にあった。それにインスパイヤされたOrangeboxは、物理的空間という立場でその両者の感じ方の溝を埋めるためにスペースで何が出来るかを調査、研究した。この研究結果を受け、Sticky CampusとNew Dynamics of Smart Learning、そして、Steelcase EducationのOwen Pescod氏は、教育の今後のトレンドとキャリア教育の将来的な融合化についてのパネルディスカッションを共同主催した。
進化する教育風景
その世界的トレンドはアジア太平洋地域でも起きている。新しいタイプの学校や大学がよりオープンな環境にシフトするにつれて、学習環境における人間主体のアプローチがますます重要視されるようになった。オフィスや教育環境では、変化する学生の期待に応え、才能を引き付けるために物理的環境をうまく利用しようとしている。テクノロジーは障壁を壊すという意味では大きな役割を果たしているが人間同士の対面での対話も重要だ。
香港公開大学(OUHK)の図書館司書、Owen Tam氏は、学生たちの学習方法の変化に伴って図書館をどう変革すべきかを語った。過去30年間、同大学は遠隔教育機関から学部や大学院、社会人プログラム、図書館サービスや学習スペースを抱える本格的な大学へと変貌した。これは学生のニーズの変化に対応するもので大学の主要なステークホルダーとも協力しながらTam氏とそのチームは図書館の再生プロジェクトを主導、大学キャンパスを学生たちのニーズを真に満たすものへと変革した。新たな図書館には、従来の静寂な学習エリアに加えて、活気のあるコラボレーションやカフェエリアを備え、試験期間に合わせた開館時間の延長やラーニングコモンズという新たな機能も持ち合わせた。また、セミナーやイベント開催のための展示スペースや柔軟性の高いゾーンに加え、図書館を大学の学習とカルチャーの中心と位置付けた。再生に向けての最大の課題はそのスペースのあり方だったとTam氏は語る。「香港の不動産は最も高いため、その空間は最大限に活用しなければなりません。」とTam氏は説明する。新たに生まれ変わった活気溢れる図書館はその成功事例としてラーニングコモンズをキャンパス内の他のエリアにも拡張する計画もある。
「香港の不動産は最も高いため、その空間は最大限に活用しなければなりません。」
Owen Tam図書館司書、香港公開大学
大学でのキャリア教育を実施する
パネリストたちは学生が大学からキャリアへうまく移行できるように教育機関と企業の密な連携に関して議論した。
EYのエクスペリエンスデザインのエグゼクティブディレクターであるDwayne Serjeant氏は、「EYウェーブスペース」という先進的な例を紹介した。それは典型的な従来型コンサルティングではない。ユニークな環境でクリエイティブチームが新たな枠組みで問題解決を試みようとするものだ。 Serjeant氏は、「創造的に問題を解決する引き金となる学習方法を再構築しようとしています。」と語る。EYウェーブスペースの物理的環境はオープンかつインフォーマルでコラボレーション用デジタルテクノロジーが完備されている。お客様も招き入れるそのスペースは、卒業生は彼らの体験を話すために招待されることもある。「彼らは自分たちが学び、経験したことを広く紹介するためにウェーブスペースに戻ってきます。資格を取得したなら仕事は安定します。しかし、仕事以外に何かできないか。人生そのものを可能な限り実りあるものにするためのバランスです。そして、私たちは彼らから学び、学んだことをどうやって社会やビジネスに還元していくかを考えられるのです。」
学んだ多くはこれから就職をする若者にとって不可欠な急速に進化するテクノロジーに関することだ。「EYでは、職場に新たなテクノロジーを持ち込んでいるのは若い社員です。組織としてはそれになんとか対応するよう努めています。同時に顔を突き合わせた対面式交流も重要で、要はそのバランスなのです。」とSerjeant氏は説明する。毎日30分間の定例会議は、EYウェーブスペースのチームの目標の一つである個人的つながりの構築にも役立っている。
「EYでは、職場に新たなテクノロジーを持ち込んでいるのは若い社員です。組織としてはそれになんとか対応するよう努めています。同時に顔を突き合わせた対面式交流も重要で、要はそのバランスなのです。」
Dwayne Serjeantエクスペリエンスデザインエグゼクティブディレクター、EY
デザインを組み込む教育
北アジアのJLLのリージョナルエデュケーションディレクターのJohn Mortensenは、地域に新たに創設される学校と新たな学習環境の創造で協働している。その環境は従来よりも広いより柔軟なアプローチを採用、教室は10人から100人の大小のグループまで対応できる。スペースはそのプラットフォームとして位置づけられ、大学はテクノロジーを活用して物理的境界を超えながら学習できるような環境づくりを目指している。爽やかな気候のオーストラリアの大学では屋外活動を奨励している例もある。「WiFiを駆使することで不動産全体を学習環境として活用すること、屋内外でネットにつながりコミュニケーションができること、そのことで教室や大学キャンパスを超えて地域社会全体が学生や教師のコミュニケーションスペースになるのです。」
「屋内外でネットにつながりコミュニケーションができること、そのことで教室や大学キャンパスを超えて地域社会全体が学生や教師のコミュニケーションスペースになるのです。」
John MortensenJLL、北アジア担当リージョナルエデュケーションディレクター
「スティッキーキャンパス」というコンセプトや学校や大学が才能を引き付けたいと願うことは広く知られるようになった。「その背景には世界的な教師不足があります。中国では教師や教授陣を引き付け、長期間定着させなければなりません。その際に物理的環境は引き付ける大きな魅力要素になるのです。」
また、学習内容が時代遅れにならないようにするためには教育機関と企業との調整も必要になる。「エネルギーとサステナビリティがJLLのサービスの重要な部分を占めており、これらの要素をうまくコース内容に組み入れ、学生と共有できるようにして欲しいという要求もありました。」とMortensen氏は語る。
変化の受容、聞いて学ぶことに注力すること。それが教育者が進化する学生のニーズに応え、将来のキャリアのために準備ができる適切な体験や環境を与えることができるようになるという結論でパネリストたちは満場一致した。
将来、学習を促し強化する方法としての物理的環境の活用方法については Steelcase Education オンラインをご覧ください。