「イノベーション」に関する考察
共同学習を学ぶ
今回のLINC創設にあたり、何よりも重要視されたこと。それは世界的に統合された「学習する組織」への転換をスピードアップさせることであった。 「学習する組織」という言葉を普及させたピーター・センゲ(Peter Senge)氏は、その定義を「人々が真に望む結果を生み出す能力を持続的に広げられる場、新しい思考パターンが助長される場、集団としての向上心が自由に育つ場、共同で学ぶ方法を継続的に学習できる場」と説明している。
個人やグループでの学習を促進するために、LINCでは多種多彩なインフォーマルなスペースやいくつかの特別なクラスルームが設置されている。ホワイトボードなどのアナログツールに加え、統合テクノロジーやモバイルテクノロジーも完備し、縦のスペースを活用しながらアイデアやコンテンツを容易に分析、結合、発展させながら新しい何かを創造することを念頭に全ての空間がデザインされた。遠隔学習のクラスルームの近くにビデオ会議の部屋を設置することで、国内はもちろん海外とのコラボレーションや学習も容易だ
「コミュニティ」をつくる
LINCでは20以上もの国籍の人々が共に働き、人との交流、コラボレーション、学習を助長するために、設計デザイン上、「動くこと」が配慮されている。自席デスクではなく、チームは指定されたスペースで共に仕事をし、全従業員がオフィス全体を共有し、一日中自由に動きながら仕事ができるように設計されている。
「LINCでは、敢えて境界を無くしています。そこはアイデアやリソースを共有できる結束した”コミュニティ“として緊密な連携が取れる場所なのです。」と言うのはBernard氏だ。「設計デザイン上、仕事中に意識的に立ち上がり、歩き回る。偶然に人と出会い、対話や仕事ができるように意図的に仕掛けているのです。職場において、日々、個人の目的意識が集団としての共有意識として認知されて初めて、個として組織として真の力が発揮されるものと私たちは考えるからです。」
人が動く動線も然り。敢えて人を動かし、スペースのあらゆるエリアに誘導し、人を交差させる設計だ。自然な要素は多くの人を引きつける魅力を持つ。意図的に計画された行き止まりの袋小路はプライバシーに最適なスペースとして人々を惹きつけてやまない。
LINCの重要な意思決定のひとつであり、このプロジェクトの特徴的エリアは、空間を開放し、人々の動きを促し、各フロアから視界が広がる広い階段である。そこはエレベーターとは異なり、人が交差し、偶発的な出会いと会話を生み出す「場」として位置づけられた。
また、もうひとつの特徴は、旧態依然とした社内カフェテリアを仕事の「ハブ」となるダイナミックな「目的地」へと転換したワークカフェ(WorkCafé)の存在だ。これはSteelcaseの象徴的コンセプトだ。スペースにはコーヒーのプロであるバリスタがいるコーヒーバーもあり、2フロアにまたがるスペースは、人々が交流し、仕事をし、休息する「場」として常に賑わっている。
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