他を凌駕するSteelcase Karman
コロナ禍、世界中の多くの人が自宅で慣れないイスに長時間座りながら仕事をすることを強いられている。
Steelcaseデザインスタジオは、コロナ前から新たな働き方やより快適に働くことへのニーズを察知し、ハイブリッドワークに向けた次世代型エルゴノミクスチェアの開発に着手していた。
Steelcaseのグローバルデザイン&エンジニアリング担当副社長であるジェイムズ・ルドウィックはこう語る。「ユーザー自身さえも気づかない最上のユーザー体験価値を創造すること、それを私たちは目指したのです。座るとチェアが身体の動きに反応し、あらゆるユーザーにフィットするというチェアの開発です。そして、それはオフィスだけでなく、居住空間にも溶け込む佇まいがあることも重要なポイントでした。」
このビジョンがこれまでにない革新的な開発方法へと導き、従来のメッシュチェアを凌駕するSteelcase Karman(スチールケース・カーマン)が誕生することになる。21世紀型デザインとエンジニアリング技術を駆使してもたらされたのが身体の動きと体重に反応して直感的に動く比類のない快適さである。従来のメッシュチェアで感じる大腿部や背中への圧力を軽減し、究極の座り心地を追求している。
Steelcase Karmanの21世紀型デザインが人体の動きと体重にどのように反応しながら比類のない快適さを生み出したかを知ろう。
快適さを超える
Karmanの開発には、比類のない快適さを生み出すという観点から座面設計に焦点があてられた。「座っている間中、身体に接触しているのがチェアの座面です。座ることから腰痛に悩む人が多い中、その痛みの多くはお尻の筋肉(臀筋、でんきん)または大腿部や背筋が圧迫されて起こることが多いと言われています。これは複合的に起こる問題であるがゆえにチェアの座面が鍵になると私たちは考えたのです。」とルドウィックは語る。
試作品とテストを何十回と繰り返し、画期的な高機能テキスタイルと座面クッションを融合させることで生まれたのが特許取得済みハイブリッドシートである。多くのメッシュチェアで使用されている動かない固定フレームの代わりに、しなやかに屈曲する超軽量フレームとテキスタイルを一体化するという画期的な設計方法を生み出し、痛みの原因となる負荷を大きく軽減することに成功している。
Steelcaseのシニアプリンシパルエンジニアであるニック・ディーバーはこう語る。「その着想となったのが人体の自然の動きです。座面と背もたれの両方にチェア下部のフレームの動きと調和して動くこれまでにないしなやかさを持たせました。座面に座っている間中、人体の動きに合わせて流れるように動くチェアです。」
メッシュを超える
既存のメッシュ素材では望んでいたレベルの座り心地を目指すのは不可能だったとルドウィックは語る。「メッシュチェアが好まれる主な理由は、通気性とその軽快な雰囲気です。しかし、その座り心地に問題があるのも事実です。メッシュ座面はハンモックのように動き、体重の全てが中央に集中してしまうからです。この理由から私たちはメッシュには消極的でした。」
数え切れないほどのコラボレーションと実験を重ねた結果、その限界を超えるための突破口となったのが、特許取得済みのShrinx(シュリンクス)テクノロジーを駆使した高機能テキスタイル、Intermix(インターミックス)の開発である。革新的ともいえる独占的織布工程で張り地そのものに人間工学的サポート力を持たせたことで座面が沈んだり、硬く感じるという問題を解決するにいたった。「Intermixは、バネのように跳ね返る弾力性と安定性を備えた高機能テキスタイルです。座った際に体重を座面と背もたれに均等に分散させ、身体の動きに合わせてしなりながら身体の形状にフィットします。」と説明するのはテキスタイルの共同開発に携わったシニアプリンシパルエンジニアのゴーディ・ピータスンである。
従来のメッシュチェアのエッジの硬さから起こる身体への負荷や痛みを解消し、しなやかなフレームとIntermixテキスタイルを一体化したことで、背もたれに寄りかかる、前や横に重心をずらして座るなど多様な姿勢にも柔軟に応えることが可能になったのである。
「仕事をしている際の座り方を観察すると、人は一般的に推奨されているような正しい姿勢でじっと座っているわけではありません。むしろ身体をいろんな方向に動かしていることが分かります。それは決して悪いことではなく、むしろ自然なことです。快適と言われるチェアは最初の数分間は快適と感じるかもしれませんが、長時間となるとその座り心地は十人十色なのです。」とルドウィックは続ける。
Steelcaseのシニアインダストリアルデザイナーであるジュリー・ヨネハラはこうも述べている。「Intermixの魅力はその滑らかな質感と風合いです。人体に非常に近いものをつくろうとすると、その手触り感は不可欠なものでした。それが独自の織布工程によって快適さと性能を向上させただけでなく、多様性と表現のプラットフォームを確立することにもつながりました。細かい糸状の繊維同士を密に織ることで光沢感を、粗く織ることで透明感を、さらに複数の色を織り混ぜることで見る角度で色が微妙に変化する特有の風合いを生み出しました。着想となったのが高機能アスレチックウェアでその第2の肌のように動くダイナミズムでした。」
Steelcase Karmanは、業界随一というカラーバリエーションを展開し、13種類のIntermix張り地カラーとLux仕上げで無限大のデザイン表現が可能になった。ヨネハラはこう続ける。「ブラック、ホワイト、グレーを超えて、単色のモノクロモダンからレジデンシャルラグジュアリーまでその厳選された選択肢であらゆるスタイルや環境にフィットするチェアをつくりたかったのです。」
常識を超える
Steelcase Karmanは、地球と人の未来を念頭に責任ある設計を中核に位置づけている。サーキュラーデザイン統括グループのメンバーでもあるルードウィックが家具、建物、都市などのデザインにおいて提唱しているのが複雑さからシンプルさへのシフトというデザイン哲学である。「人々が求めているものは、より直感的、より少ない資源、より少ない材料で創り上げたモノとの体験です。」
Steelcase Karmanは持続可能な材料を使用、かつ必要最小限のコンポーネントで構成されている。設計手法は直感的に反応する高度な動きを実現するために、量子力学ではなく物理学的観点を重視することでわずか13kgという重量を実現している。「私たちが問い続けたことは、創造できる最もシンプルなものとは何かということです。自然のシステムは極めて効率的です。このチェアもミニマムで効率的であるべきだと私たちは考えました。」とディーバーは最後を締めくくった。
Steelcase Karmanの21世紀型デザインが人体の動きと体重にどのように反応しながら比類のない快適さを生み出したかを知ろう。