組織文化 + 人材

アジャイルチームの1日

所要時間 7分

「アジャイル」、それは「チーム」に尽きる

アジャイルチームの1日。モノのインターネット(IIoT)は、身の回りのあらゆるものがインターネットにつながる仕組みで製造業の効率化を促進し、品質向上とコスト管理を改善していくことで注目されている。Kimが率いるSteelcaseのIIoTチームは、まさにそれを実現するための要だ。同社の世界中に広がる製造施設のデータを収集し、視覚的に表示しながら的確な判断や意思決定が下せるような基盤をつくることを業務としている。

同チームは、ITやエンジニアのようなビジネスパートナーたちで構成されている。過去2年半の間、チームはより良い成果をよりスピーディに達成するためにアジャイル原則を採用してきた。そこからチームが学んだ教訓が今、ITの世界をはるかに超えて多くのチームで実践され始めている。

今日の仕事のスピードに合わせるためには、チームは常にワークフローを乱さないようにストレスなく移動し、1日の様々な活動をこなさなければならない。アジャイルワークを念頭に設計されたチーム主導の新スペースでは、仕事の弊害となるあらゆる障壁が取り除かれた。実際、SteelcaseのITチームが約1年前に移転した頃と比べると仕事の達成率は36%増加した(詳細については、www.steelcase.com/agile-case-studyのTransforming ITをご参照ください)。

その新スペースがアジャイルワークの流れるようなワークフローをどうサポートしているのか。それを把握するために、同チームの1日とはどのようなものかを行動観察してみた。そのスペースは「アジャイル」なチームカルチャーを育み、皆がスピーディに動き、新しいアイデアを試し、実行し、顧客につながることを念頭にデザインされていた。そのスペースで彼らが実際にどう仕事を遂行しているかを見てみよう。

8:00 AM
1日の始まり

チームの1日は「チームスタジオ」から始まる。お互いに進捗状況をチェックしたり、その日の仕事を確認する作業だ。メンバー同士は近くにいるため、ミーティングを敢えて設定したり、メールの返信を待たなくても質問すればすぐに答えが返ってくる。チームリーダーであるKimはチームスタジオの裏に位置するデスクで集中作業をしていてもチームの様子が分かる環境にいる。

9:00 AM
日課の立ちながらミーティング

「チームスタジオ」に隣接するチーム所有の「フロントポーチ」では立ちながらミーティング
が日課として行われている。リラックスしながらの姿勢は、その日の計画をよりオープンにカ
ジュアルに話し合うためには適している。

9:15 AM
対面しながら働く

短い立ちながらミーティングの後は、スタジオ内で対面しながらの協働タイムが設けられている。ワークフローの中心はリアルとネットで快適につながること。それがリアルタイムでのコラボレーションを可能にし、チームの結束力を高め、共感と信頼をより強固なものにしていく。

10:30 AM
顧客とつながる

Kimは、製造関連の部署と連絡を取り、プロジェクトの判断基準を確認する。この個室はスタジオからわずか数歩のところにある。このエリアは「ビジネスディストリクト」と呼ばれ、誰でも利用できるスペースがある。このエリアでは、大会議室、共有アンクレイブ(隠れ家)、
タッチダウンスポットなど様々な「場」を提供。スタジオの近くに居ながらプライバシーや集中、ペアや個でのワークをしっかりサポートしている。スペースの可視化も重要視され、チーム内外の仕事の見える化を図ることが目的である。

11:00 AM
キャンプするように

Kimとビジネスパートナーたちは、プロジェクト期間中には同じスペースに席を構え、お互いが密に協働することの必要性を大いに感じている。そして、案内されたのが「フレックスキャンプ」だ。このスペースは誰でも利用でき、アジャイル実践がそうであるように、変化に合わせて対応できることが考慮されている。まるでキャンプをするように、ゲストはチームの側で何時間あるいは何週間にもわたって席を構え、カジュアルでの会話を促すよう設定されている。

12:00 PM
カフェでの会話

他チームの同僚との情報交換はランチタイムが多い。「セントラルカフェ」は、チーム同士をつなぎ、新たな関係を構築しネットワークを深めるハブとしての役割を果たす。

1:00 PM
プロジェクトの計画

昼食後、「チームスタジオ」に戻るとチームは次のスプリントサイクルを計画しているところだった。装備されたホワイトボードや電子ディスプレイで考えを視覚化し、情報共有しながら今後の計画を話し合う。コンテンツに集中できることで互いを素早く理解しながらサポートすることが容易になる。時間枠であるスプリントを重ねながら学習することで、互いの依存関係が明確になり、課題や代替方法を前以て検討することができる。

2:00 PM
障壁を壊す

チーム内での問題提起によって仕事上の課題で経営サイドの意見が必要になった。そこで向かったのは経営幹部が席を構えるリーダーシップエリアだ。ここでも「仕事の見える化」が図られている。電子ダッシュボードでスクロールしながらチーム活動の進捗状況の確認もスムーズだ。経営幹部とのコミュニケーションは双方向だ。進捗と課題に関してはチームに権限委譲されていて経営幹部はただチームをサポートするだけだ。また、経営事業戦略もチームと共有されるため、チームは自分たちの仕事が戦略的にどう事業目標と合致しているかをきちんと把握できる。

2:30 PM
一息して、リラックス

仕事には極度の集中が求められるため、その場を去らずに一息できる「場」が必要になる。そこで配置されているのが、「ガーデン」と呼ばれるスポット。ひとりになれる隠れ家のような「場」である。日常からの脱却は、新たな視点で問題に取り組む意欲をもたらす。個人用「ガーデン」スペースは自然と繋がり、チームから離れてひとりで集中、熟考できること、そして、コラボレーション用「ガーデン」は交流や活力チャージのためのスポットとして機能する。

3:30 PM
快適な
コラボレーション

中央に位置する共有ポッドでオレゴン州ポートランドの同僚とビデオ会議でのコラボレーションワーク。チームメンバーは、心身ともにリフレッシュし、そこは新たなアイデアに溢れていた。進捗報告や問題解決等の従来の会議内容は「チームスタジオ」を利用。それに対して、リラックスできる家具でよりカジュアルな姿勢をサポートするこのスペースは、従来とは異なるミーティング形式や創造的思考を促す居心地の良い雰囲気を創出している。

4:30 PM
チームで成果を祝う

一日の最後には仲間と成果を祝うこともよくある。チーム内の信頼関係と前向きな雰囲気を築くためだ。このスペースでは活動もスムーズに移行出来るため、ワークフローを乱さずに済む。

今回学んだこと
SteelcaseのITチームは、アジャイルを着実に実践し始めている。数ヶ月間に及んだ新スペースでの測定結果は初期データとして公表されている。私たちの目的は、アジャイル環境を成功させるためにワークプロセスとカルチャー、そして、働く「場」が交差する状況を徹底的に観察するということだった。測定には、センサー、目視観察、インタビュー、ワークショップなど様々な手法を用いた。「アジャイル」では、まずは初期の発
見を共有すること、そして、測定し続けること、そして、環境を進化させながらさらに学ぶという意識が非常に重要になる。

学習と生産性との関係性

  • 仕事のスピードが36%向上。職場環境が個のパフォーマンス向
    上に関係していることをデータが示唆
  • 職場環境により多くの選択肢がある人が11%増加
  • 職場環境に心身共にリフレッシュできる場所がある人が6%増加
  • 機器やツールの利用アクセスで心配がある人が18%減少
  • 職場環境でプライバシーが確保できる人が9%増加

顧客や同僚とのより強固な関係構築

  • 信頼関係が高まった(メンバー間の誤解を心配する人が減少)
  • 部署外の人とつながる時間が増加した
  • 外部パートナーやIT顧客とのコラボレーションが改善した

必要とされている感覚と企業目的の共有

  • 社員は職場環境を通して会社から大事にされていると感じるとデータが示唆
  • 組織の透明化で経営幹部の顔が見え、直接対話が出来た
  • 企業の事業戦略と目的を深く理解出来た
  • 上司と部下の1対1のコミュニケーションが増えた

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