卓越性の追求:優れたアイデアの創造
優れたアイデアは「創造性」発揮に向けてのベースを築き上げた環境でのみ育まれる。
Ph.D., MM, MCR Tracy Brower氏寄稿
私の大学の学部課程プログラムの教授が「正しいアイデアにはエネルギーがある」と言ったことがある。人の注目が集まり、資金や人材が引きつけられ、大きなうねりが起こっていく。また、豊富なアイデアを持つことは卓越性の基盤だ。つまり、職場環境に溢れるアイデア の量はその質と同様に企業繁栄への原動力となるのだ。
しかしながら、卓越性が発揮される期間は短い。昨日の優れたアイデアは今日にはその価値が低下するからだ。創造性とイノベーションが注目され、そのニーズが飛躍的に高まる中、そのギャップは企業にとっても大きな問題である。そして、個人のキャリア開発にとってもだ。
SteelcaseとMicrosoftによる最新調査によると、「創造性」を21世紀の仕事スキルだと確信しているのは77%にも及ぶ。その一方でAdobeの「創造性」に関する意識調査では69%もの人々がその潜在的な創造性を発揮しきれていないと感じていると報告している。さらに、ForresterのThe Creative Dividend(創造性がもたらす利益)によると、61%の企業経営層は自分の会社が創造的だとは思っていないと答えている。経営思想家であるRoger Martin氏は、将来、人類が繁栄するためには創造重視の仕事をもっと創出すべきだと主張している。
人間はさらなる高みを目指し、より創造的に優れたアイデアを生みださなければならない。しかし、それにはどうすればいいのだろうか?
「創造性」を発揮するにはまずは以下のように視点を転換することだ。
- 高給とり幹部による意思決定 (HiPPO意思決定) がなされる組織階層型モデルからネットワークでベストな方法を見出すネットワーク型モデルへ。
- 「創造性」を発揮できる職種を限定することから全ての業務で「創造性」を持って思考し行動するよう状態へ。
- 組織での地位によるテクノロジーの利用制限から全社員がテクノロジーを平等に利用できる状態へ。
- 規律で社員を縛る管理体制から一定の重要な規律だけで仕事を達成できる状態へ。
次に、「創造性」を発揮させるには組織として生み出したい能力を指し示し強化することが重要になる。それにはリーダーシップや報酬制度、職務設定などの組織のシステムに関わることの見直しと同時に、忘れてならないのが働く「場」である。
働く「場」は社員が自信を持って創造的に表現し、創造的側面から仕事の生産性を上げていくには非常に重要な要素になる。それはどういうことか? それは企業風土を最も顕著に表すモノであり、企業は社員に対してその企業価値と社員への期待や働き方を指し示すものだからだ。
- 働く「場」は「創造性」にとってグループでのコラボレーションと個での集中ワークの両方をサポートすること。そのためには人をつなぎ、プライバシーを確保することを考慮すること。
- 働く「場」は問題に集中して取り組み、一時的に問題から離れて休息、熟考できること。
- 働く「場」はそこで働く人の感性を刺激し、迎え入れる雰囲気を持っていること。
- 働く「場」はマルチな方法で仕事がこなせるようにツール、テクノロジー、スペースを誰もが公平に利用できること。
- 働く「場」は個々が必要とするものを与えること。そのためには創造プロセスの各要素を満たす様々なスペースを提供する「場のエコシステム」を採用すること。
正しいアイデアにはエネルギーがある。しかし、優れたアイデアは 「創造性」発揮に向けてのベースを築き上げた環境でのみ育まれる。働く「場」は「創造性」の発揮に大きく貢献し、企業をさらに高みへと上げていく。
Tracy Brower博士は仕事や働く人々、そして職場環境にフォーカスする社会学者である。彼女はSteelcaseのApplied Research + Consultingグループのプリンシパルであると同時に、2014年に発売されたBring Work to Life by Bringing Life to Work: A Guide for Leaders and Organizationsの著者である。Tracy氏はIFMA Research & Benchmarking Instituteの役員会メンバーとして、又Coda Societies とMichigan State UniversityのGraduate Mathematics Programのエグゼクティブアドバイザーとして寄与している。