当ストーリーは、Steelcase 360シリーズ 「距離を感じさせない工夫」 のひとつです。
「対面での会話ほど優れたものはありません。しかし、居住地がそこにない、在宅ワークをしている、出張できない等の理由で物理的に不可能なこともあるのです。」
ゲール・モートレイ
ブランドエクスペリエンス/ワークプレイスイノベーション担当副社長
Steelcase
分散しながら働くどのチームに尋ねてもその状況は決して容易ではない。チームを上手く機能させることは、たとえ同じスペースで肩を並べながら仕事をしていてもうまくいかないからだ。メンバーが分散している場合にはそれにまた新たな課題がのしかかる。
電話での会話では話を割り込んでかぶせてくる人も多く理解することが困難な時がある。
電話での会話では、話を割り込んでかぶせてくる人も多く、理解することが困難な時がある。
オフィスの外で働いている場合には、ホワイトボードの内容を見ることができない。
電話で意見をすると突然静かになり、まるで自分がそこにいるのを忘れられているかのような疎外感を感じる時がある。
似たような経験はないだろうか?
オフィス環境の研究者たちはこのことを「存在格差」と呼んだ。 そこにいる人といない人では明らかに格差が生まれ、そこにいない人が不利にならざるを得ないという。そこにいないことで会議中に起きていることもその会議の前後に交わされる何気ない通路での会話もわからないからだ。
Steelcaseのブランドエクスペリエンス/ワークプレイスイノベーション担当副社長のゲール・モートレイはこう語る。「対面での会話ほど優れたものはありません。しかし、居住地がそこにない、在宅ワークをしている、出張できない等の理由で物理的に不可能なこともあるのです。テクノロジーを活用すればまるでそこに自分がいるような環境を創り出すことはできるのです。そういったことを当社は深く研究し続けています。」
当社の顧客である多くの先進的企業が、グローバルチームの力を最大に活用しながらイノベーションを起こそうと考えていた時期がある。当社はその2000年代初頭から分散型チームの研究に着手している。異なる文化が多様な思考を生み出し、アイデア生成の活性化につながると考えたからだ。しかし、実際には距離の壁から起こる「存在の格差」は想像以上のものでチームは身体的、認知的、情緒的にストレスや欲求不満が溜まっていった。「もし企業がテレワーク主体のチーム連携を一層高めながらイノベーションにつなげたいと思うなら、チーム環境の見直しは避けては通れません。環境改善がチームメンバーの意欲ややる気をもたらし、成果を生んでいくからです。」とモートレーは言う。
チームワークを促すテクノロジー
チームにとってテクノロジーの活用は欠かせない。同じ場所にいなくても、コラボレーションが効果的にできるように設計されたソフトを使うことでその働き方は大きく進化した。例えば、Microsoft Teams、Zoom、Webexなどのビデオプラットフォームでのコンテンツ共有機能でチームメンバーは、リアルタイムでコンテンツ共有が可能になった。しかし、カメラ機能など全ての機能を有効に活用しているわけではない。自宅からだと服装や散らかった環境を見せたくないという理由だけで音声だけをデフォルトにしている人も多い。実はカメラをオンにすると会話はより速くスムーズになる(例えば、Microsoft Teamsでは背景をぼかすことができる。通話に参加する際にMore Actionsボタンを押すだけ)。
顔の表情やボディランゲージなど視覚的に読み取れることで、話を中断したり話が被ったりすることはなくなる。目を合わせての会話は相手の意図を読み、それが相互理解と共感にもつながっていく。これはチームメンバーが世界にまたがり、多様な国籍や文化を持つチームには特に有効であるはずだ。カメラの電源をオンにするもう1つのメリットは、自分が相手に見えるために会話に集中せざるをえなくなるということも大きい。
こういったコラボレーションテクノロジーは、コミュニケーションを著しく改善していく。しかし、アイデアを生み出す生成型コラボレーションの場合、大人数だとある程度の制限も発生してきてしまう。「パソコンベースのWebビデオプラットフォームは、遠隔にいるチームメンバーとのチームワークを向上させますが、必ずしもコンテンツと人を同時にサポートできるとは限りません。」と語るのは当社のIT担当であるデビッド・ブリックルだ。例えば、Webビデオプログラムを使ってコンテンツ共有すると画面の多くがコンテンツ共有に割かれて相手の画像は下の小さなサムネイルに縮小されてしまう。「特に大人数のチームでの会議を機能させるには、高精細のビデオ会議をサポートできるMicrosoft Surface Hubなどの大型コラボレーションデバイスが役に立ちます。」とブリックルは言う。
「相手を見て互いの話に耳を傾けながらコンテンツを一緒に確認し、発展させていくにはある程度の画面の大きさも重要になります。」
デービッド・ブリックル
テクノロジースペシャリスト、Steelcase
リアルとネットを融合
今日、多くの企業が大型で高精細のビデオ会議機能を活用して分散型チームをサポートしようとしている。しかし、従来の会議室では、モニターとカメラを追加してビデオ通話をすることが多いのが実情だ。会議室によくある長方形のテーブルは、部屋にいる全員をカメラに収めることができないため、相手は部屋の参加者全員を見ることができない、通常は一台の画面しかなく、コンテンツと相手を両方同時に見ることはできない、部屋のどこに座るかによっても音声具合が異なる場合もあるなどの問題点も多い。今日、ビデオ会議はもはや日常の風景になりつつある。分散型チームのコラボレーションやコミュニケーションの質の向上を目指すならば、スペースという観点からビデオ会議をここで見直してみる必要があるだろう。
当社の研究員やデザイナーによると、分散型チーム用に設計されるスペースでは、自分とカメラの中の相手が同レベルのパフォーマンスを達成することが大きなゴールになると言う。「同じスペースにいるチームは、創造的な問題解決、仕事の調整、評価、学習といった全ての観点から成果を高めることができます。私たちはチームがどうやってお互いを知り、自発的に対話をし、仕事をこなしているかを彼らの行動を観察することで研究しました。スペース内でこういった活動がスムーズに行われることが理想的なのです。そして、様々な場所や地域にいながら協働するチームのためのスペースとは、どうやったら同じ場所にいないという格差をなくすかとことに尽きます。」と語るのはSteelcaseのグローバルチームの研究に携わる研究員、パトリシア・カマーだ。
コラボレーションテクノロジーを最適にサポートするスペースを考える際に、まず研究員たちはこう問いかけた:分散したチームメンバー同士は、どうやったらリアルタイムにコンテンツ共有できるか? どうやったら密に繋がれるか? どうやったら離れながらでも公平な環境で会議に参加できるか?
カマーはこうも主張する。「今日の分散型チームにとっては、知識やアイデアが溢れ続けることが成功の鍵になります。」
「そのためには危機的状況からの迅速な回復力や順応性でその時々のニーズの変化に合わせて働き方を素早く変化させることができるスペースが必要なのです。」
パトリシア・カマー
主任研究員、Steelcase
これらの問いへの答えを追求するために研究員たちは「チーム」の研究に着手し、開発したのが「行動プロトタイプ」と呼ばれるものだ。アイデアを実際の現場でテストするためのコンセプトのようなものだ。これが、その後当社が世界中で実践していくデザインソリューションの開発へとつながっていく。
ビデオ通話中心のチームが考慮しなければならない8つのポイント
テレワークを緊急導入する、または将来的にテレワークの正式導入を検討している企業に向けて、ビデオ通話でのコラボレーションを向上させるスペースづくりのポイントをここに紹介しよう。
1. チームの規模とビデオ会議の内容を計画しよう。 1対1の対話、ペアでの作業、小人数でのコラボレーションかどうかも重要なポイントだ。できるだけ多くの選択肢を与えることである。例えば、チームスペースに隣接するビデオ会議用キオスク、そのスペース内のデッドスペースとなるコーナーの活用、携帯機器などだ。豊富な選択肢は、スペースである不動産を最大限に有効活用できると同時にテクノロジーの活用も促していく。
2. ビデオ通話でのコラボレーションが増えると、音量を上げたり同時に何人かが話したりと、音の問題が発生することが予想される。「ポッド」は、1対1でのビデオ通話や少人数でのビデオ会議などに最適で周囲からの邪魔を防ぐための居心地が良いスポットとして利用されやすい。
3. 大人数用のチームスペースでは、参加者全員が見える/聞こえるようにカメラやマイクを適切に配置しよう。複数の画面を活用することで参加者全員の様子が分かり、コンテンツ共有も同時に可能になる。また、部屋の中を動き回っても対話が中断されることがなくなる。
4. 大型コラボレーションデバイス(Microsoft Surface Hubなど)は、製品開発やデザインチームなどコンテンツ共有を頻繁にするチームに最適なツールである。特にホワイトボードでのコンテンツ共有、大画面でのデザインやコンテンツの見直しなどを日常とするチームには欠かせない。
5. グループワークとひとりでの作業がシームレスにスムーズに移行できるようなゾーンをつくる。 コラボレーションを重視するチームは、1日を通してこれらの様々なワークモードをすばやく切り替えられることが必要となる。チームスペースに隣接して1人用スポットを設置することでチームから一時的に離れ、またグループに戻ることも容易になる。
6. ビデオ会議が長時間にわたる場合には、会議中でも身体を動かし、姿勢を変えてリフレッシュできるような環境をつくる。 スツール高のテーブルを利用することで立ち上がってもカメラから外れることはない。
7. 同じ部屋にいても離れていてもチームの誰もが質の高い平等なビデオ体験ができるような環境をつくる。 出来るだけすべての場所に同等に近い環境を設置し、同等レベルのツールとテクノロジーを備えよう。
8. チームのビデオ会議スペースに隣接して、「ワームホール」と呼ばれる連続したリアルタイムビデオ接続ができるようにする。「ワームホール」とは、2地点を直結する空間トンネルのようなものでまるでそこにいるかのような環境を提供する。会議終了後も人が代わりながらたわいないおしゃべりを続けることができるため人間関係の構築にもつながる。
直接対面して対話する体験に取って代るものはない。しかし、今日、それだけが唯一の方法でもない。
直接対面して対話する体験に取って代るものはない。しかし、今日、それだけが唯一の方法でもない。テクノロジーが分散したチームに同等の環境をもたらすのにはまだ時間がかかる。しかし、オフィス内の個室やオープンな執務スペースでのテクノロジー利用を見直すことだけでもその働き方はかなり改善される。テクノロジーを最大限に活用できるようにオフィスを設計する、それだけで分散しながら働くチームの連携は上手く機能していくことは間違いない。
このストーリーは360マガジン69号 「距離的制約をなくす」 でも掲載されています。
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