オフィス文化を進展させる
そこはオフィスに「楽しさと活力」という秘伝のソースを注入したとして広くマスコミの注目を集めました。ヒップなオフィスを持つオフィス文化は社員の士気や生産性、会社に対する忠誠心を確実に高めるものです。しかし、実際にその効果は実証されているのでしょうか? それを実証するストーリーをここに紹介します。
Steelcaseのブランドであるturnstoneはオフィス文化とスペースとの関係についてのインサイトを得るために、社員数100人以下の企業515社を対象にアンケート調査を実施しました。この調査で中小企業のオーナーまたはマネージャーのほぼ80%近くが、オフィス文化は会社の成功のベースになると断言しました。さらに80%もの企業が企業のサイズや業種に関わらず、自社のオフィス環境が活気のある文化を育むために重要な役割を担っていると確信していました。
専門家たちは業界を超えて一貫してその考え方を強く支持しています。それほど支持されるオフィス文化とはどのようなものでしょうか? そして、何故それが今、叫ばれているのでしょうか?
文化へのシフトが起きているのは高い報酬と気前のいい福利厚生を誇る大企業に対抗して、中小企業が有能な人材を登用するため、企業文化を切り札として激化する人材市場で奮闘しています。特にミレニアム世代 (2000年前後以降に成人を迎えた世代の名称) に対しての戦略の一つとして捉えています。彼らは相互に交流でき、刺激的な環境に慣れているからです。中小企業はスペースがオフィス文化の向上に大きな役割を果たしていることを強く認識しています。ソーシャルな交流、健全なコラボレーション、そして、何より楽しい魅力的な職場であることが文化のベースになります。さもなければパフォーマンスの劣ったオフィス環境の重みに耐えきれずに沈んでしまいます。
米国にオフィスを持つスペインの自転車メーカーのOrbeeで営業マネージャーをしているJason Macom氏はオフィス文化がチームに及ぼす影響について日々実感している一人です。それはブランドを社内に浸透させ、会社の雰囲気に溶け込ませるだけでなく、サイクリングへの情熱を介して人同士の純粋なる絆を強固なものにするからです。
「文化によって、社員はより情熱を持って仕事に臨むことができます。なぜなら、サイクリングのコミュニティそのものがスポーツに対して積極的だからです。」とMacomは語ります。「私たちはオフィスに自転車通勤しています。オフィスにはシャワーが備わっていて、快適に1日をスタートできます。また、トレーニングを仕事のスケジュールの中に組み込むこともできるのです。もし、私たちの文化が自転車やサイクリングのライフスタイルにおけるこだわりをサポートしなければ、最終的には会社の業績にも影響することは間違いないのです。」
こうしたことは中小企業のオーナーの多くは気づいているはずです。但し、今まではそれを裏付ける証拠がありませんでした。今回のturnstone主催の「中小企業のオフィス文化に関するレポート」では、調査参加者のうちの半数が、社員たちが自分の会社の存在理由とその価値に対して共感し、誇りを持って働いていると回答しています。
「Orbeaにとってはすべてが自転車につながっているのです。」とMacom氏は指摘します。「私たちのオフィスはコンセプトストアの内側に位置し、私たちは陳列された自転車に囲まれて仕事をしています。チームの中で自転車に乗らない人は1人しかいません。私たちの存在意義や価値の中で、自転車は切ってもきれない存在なのです。」
この調査でのもうひとつの発見はワーカーが自分の情熱をオフィスに持ち込めるというものでした。オフィスでありのままの自分でいられる自由さは、活気ある文化の中から生まれる社員の情熱に次いで大切なものであるという回答が多くありました。Steelcaseの調査でもこの「ありのままの自分でいられる」ことはウェルビーング向上の6つの要素の1つとして、社員の満足度を向上させる上で非常に重要であることが明らかになっています。
Steelcaseの研究員Beatriz Arantes氏は、「集団主義を個人主義よりも重視する東洋の文化においてさえも、仕事において本当の自分を表現できることがますます重要な要素になっています。」と語っています。
実際、文化に関しての調査に参加した人たちの90%が文化は企業にとってプラスの影響を与えていると答えています。文化は社員の生産性と創造性を向上させ、新たな顧客や優秀な人材を惹きつけて、継続的に成果をもたらし、最終的に企業収益に貢献すると考えています。
本音で仕事ができる活気あるオフィス文化は企業の貴重な資産になる、ということが証明され始めています。特に、高収入や潤沢な福利厚生がない中小企業にとって、オフィス文化は決して職務明細書や社員特典で表現されるものではありませんが、それはオフィスで働くことの楽しさを保証するものです。また、仕事に意義を見いだし、意欲的に仕事に取り組むことで、チームのメンバー間の絆も強くなります。
「私たちはコーヒーバーを自転車のショップ内に設けています。そこに皆が集い、ツール・ド・フランスのような大きな自転車レースの大会を見たりします。」とMacom氏は語ります。「仕事を離れて興奮を共有できる場を設けるだけで、仲間意識が生まれます。そうした社交の場があることによって、また仕事を頑張ろうという気持ちになれるのです。自転車のショップ以外にも、チームでのツーリングを楽しんでいます。このことで地元のコミュニティにも溶け込み、他のサイクリストともネットワーキングが築けるのです。」
…しかし、こうした文化はそれを意図的に計画しない限り生まれてくるものではありません。経営者は会社の存在価値や提供したいと思う社員特典、自社ブランドが持つ個性や理想像についてよく考えるべきです。社員は会社がこうしたことを実現化しようとしていること、そして、オフィス環境がそうした信念に基づいてデザインされていることを知れば、自然と文化は根を張り始めます。
ガラス印刷を専門とする会社のFractureは、スペースが働く環境に及ぼす影響を実感している企業のひとつです。FractureのCTO (最高技術責任者) 兼共同創設者のAlex Theodore氏はフロリダ州で立ち上げた自社オフィスのドアを開けた瞬間から、このことに気づいていました。「スペースはすべてのものに関係しています。つまり、私が言いたいのは、スペースは単に仕事をするための場所ではないということです。それはあらゆるレベルで人にインスピレーションを与える外的要素になるということです。」
「スペースはすべてのものに関係しています。それはあらゆるレベルで人にインスピレーションを与える外的要素になります。」
Alex TheodoreFractureの共同創設者
このTheodore氏の意見はまさにturnstoneの調査で明らかになった物理的環境がオフィス文化において重要な役割を果たしているということを強く裏付けるものでした。オフィスでありのままの自分でいたいと社員の気持ちを押さえつけるのでなく、むしろそれを助長するスペースづくり、そして、閉じられたドアの向こうに何かを隠すのでなく透明性を促す優れた文化を築くことが競争力のある文化に向けてのこれからの第一歩になるのです。
Macom氏はこの新しいスペースが出来てわずか1年の間にOrbeaのオフィス文化にプラスの効果が表れたと述べています。以前のオフィスは高いパネルに囲まれたキュービクルで、部門を区切る長い廊下によって隔離され、チームメンバー同士を隔てるものでした。そこには多くの障壁があり、少数の強い個性がオフィスを支配していて、気軽にコミュニケーションすることもままならず、人間関係が抑圧されているのは明らかでしたと彼は回想しています。
その時、ようやく、会社として変化を起こす必要があることに気づいたのです。高いパネルを取り除き、スペースを改装したことで社内が活気づき、リフレッシュされた文化が根づき始めました。
「オープンなオフィスになったことで、人同士の交流が広がっているのを感じます。」とMacom氏は語っています。「社員の会話が聞こえ、学ぶことができます。チームメンバーはひとりでこもって仕事をするのでなく、そこら中でコラボレーションが起きています。新スペースではチームでのコミュニケーションが増え、これは営業と物流で成功する上で大いに役立ちました。」
Steelcaseの調査では職場での健全な人間関係が社員の帰属意識や目的意識を高めることが明らかになっています。これが強固な信頼関係とコラボレーションの向上に結びつくのです。
Orbeaではこうした関係が繁栄するオフィス文化を意図的に創りあげることに成功しました。例えば、晴れた日には自転車に乗ってチームランチに出かけます。自社製品をチームで試乗できるだけでなく、オフィス外で真の自分を出しながらメンバーと交流ができる格好の機会にもなります。日々のこうしたささやかな活動が繁栄する文化を育てます。
Fractureのチームはサイクリングのような一般的なライフスタイルを共有していませんが、彼らは、オフィス文化に遊びの要素を組み入れ、職場にペットを入れることを肯定することで、コミュニティを意図的に構築しようとしています。チームのメンバーは、こうしたことがウェルビーングを促進し、関係を成長させ、そしてオフィスで本当の自分を出すことを許可するというある種の社員特典のようなものになっていると感じています。Fractureは設立からわずか5年で、スペースと創造性、イノベーション、そしてインスピレーションの間にある関係を理解した、成長する企業になりました。
低い満足度は生産性を低下させ、創造性に欠け、帰属意識も薄く、社員の間にマイナス思考を蔓延させます。こうしたものすべてが、チームの統一性を乱し、ウェルビーングを危険にさらします。
企業は、その組織の規模に関わらず、企業文化を繁栄させ、チームを強化するための対策を考えるべきです。すでに企業として安定しているか、起業したばかりの企業であるかは関係なく、理想に向けての小さなステップを迅速に着実に積み重ねていくことが、最終的には大きな違いを生み出します。
turnstone Culture Survey
turnstone は社員数100人以下の企業、515企業を対象に調査を実施しました。
47% | チームが社外での情熱を職場にも持ち込むことを奨励している |
26% | ソーシャルな場に関しては、現スペースでの改良が必要であると感じている |
72% | 現在の企業文化に不満を持っている |
90% | 企業文化が自社の成功の基礎になることを認識している |
80% | 物理的環境が活気に満ちたオフィス文化を育むために重要な役割を果たすと 確信している |
文化を育む方法とは?
柔軟になること
某大手企業で社長が「オフィスに戻る」ことを社員に要求したとして、マスコミを賑わしたことがあります。その一方で、中小企業のほぼ半分は今でも社員に柔軟な働き方を奨励しています。例えば、遠隔通信技術を利用した働き方やパートタイム、在宅勤務などもそれに含まれます。どこでも働ける環境を実現し、バランスのとれた生活を社員に奨励することで、社員の会社への愛着心や忠誠心が増し、組織としての団結力を高めます。
待遇をよくする
調査した企業のほぼ半数が、有給休暇やお菓子や食事などのサービスを提供していました。給料を増やすことだけが報酬ではありません。1日の休暇を与えることも報酬の一部なのです。また、ユニークな方法で仕事の成果を褒めることは活気のあるオフィス文化やハッピーな社員をつくりだす方法のひとつです。
「場」のパレットを提供する
turnstoneの調査は、オフィスで豊富なワークスペースを提供している企業は3分の1以下であると報告しています。スタンディング用デスク、プライベートエリア、コラボレーションスペース、ラウンジスペースなど、多種多様なスペースを計画することで、社員は働く場を自由にチョイス、コントロールしながら働くことができます。こうすることで社員のウェルビーングが高まり、豊かな企業文化を築きます。
多彩なスペースをデザインする際には、チームメンバー同士がソーシャルに交わるエリアを設置することも忘れないでください。26%の中小企業は社交的なソーシャルな「場」を創るには現スペースを変更しなければならないと答えています。スペースの中心にテーブルを設け、イベントを企画したり、チームランチをしたりすることがソーシャルな「場」を創る大きな一歩になるはずです。
ウェルビーングを育む
調査対象者の4分の1近くは、1日の間に自席を離れたり、姿勢を変えたり、仕事の場を変えたりすることで心身ともにリフレッシュし、仕事の意欲が高まると語っています。自然光を取り入れたり、屋外でのミーティングも効果があります。また、社員が本来の自分を表現できるようにすることもウェルビーングの重要な要素であることも念頭に置いてください。47%の中小企業はチームが仕事以外で情熱を感じるものを職場に持ち込むことを奨励しています。
個の成長を促進する
プラス思考の企業は、社員のキャリアの育成と人材開発に熱心に取り組んでいます。社員の疑問に真剣に答えるように努め、継続的な学習が実践できるよう支援しています。また、社員の仕事生活に影響を与える働き方やその環境を自由にチョイスできる権限を社員に与えることで、社員と会社との良好な信頼関係を築くことができます。
自社ブランドの高みを目指す
企業として、地域社会やグローバルな活動と積極的につながることで、自社ブランドを顧客や社員にとってより愛着がわくものにすることができます。社員にとって最も大切なものを特定し、積極的に関わるようにしてください。そうすれば、自社の業績が上がるだけでなく、社員の顔も明るくなります。そこから偉大な文化が始まるのです。