大胆な手法がオフィス変革を促す

所要時間 9分

ウェルビーングを配慮してデザインされたワークプレイスでは全体を構成する個々の要素が重要となります。自然や採光を取り入れた建物、同僚とのコミュニケーションを可能にするオープンなオフィスなどその包括的な戦略が私たちのオフィス環境のフレームワークを提供します。そして、ワークプレイスが細部にわたって私たちの仕事のホームになることが理想です。

ワークプレイスを使用する上でどれだけスペースが直感的であるか、家具は多様な体格やニーズに対応しているか、素材、カラー、チェアクッションの形状まで細かいディテールが私たちのウェルビーングに劇的な効果を与えます。

24 時間常につながり、スピードを要求されるビジネス 世界の中で、身体的、精神的ウェルビーングを育むワー クプレイスが急激に注目を集めてきています。私たちの 時間は今や自分のものではなく、管理することさえも難 しくなってきています。自分を解放し、リラックスさせ、 ストレスが仕事の新たなデフォルトモードにならないよ うに、少なくとも仕事と生活を離す時間をつくることが 必要です。

仕事にあまりにも精力を注ぎ、私たちはオフィス環境にバランス感覚や癒しを求める中で、細かいディテールが重要な役割を果たすことに目を向け始めています。

カタチやカラー、素材や直感的なユーザーインターフェ イスがどのようにウェルビーングに影響を及ぼすかは、 今、ホットな話題として注目されています。彼女が言う には「この動向はさらに加速し、インテリアデザイナー や設計デザイナー、建築家にとっては配慮しなければな らない項目の一つになるでしょう。」これらのデザイン 要素はSteelcase が定義するウェルビーングの6 つの 側面の3 つに直接関係しています。それは本物、マイ ンドフルネス、そして活力です。

働くスペースや手で触る家具は人間の気持ちを高揚させたり、ストレスを軽減したり、刺激を与えたりします。刺激的で人を魅了するものでもあります。

本物を探す

ワークプレイスはウェルビーングに強い影響力を持っています。何故なら私たちはスペースやツールと密接に作用しあっているからです。使い込んだスマートフォン、お気に入りのチェア、休息する静寂な場所など様々な場所や製品と関係を築いていて、感情をそのブランドや企業に移しているのです。

「デザイン要素は人がスペースや製品と共鳴するのを可能にするものです。企業は人がどうやって生活し、何が好きで、何を望んでいるかなどの顧客ニーズを把握しようとし、仕上げから機能にいたるまであらゆるレベルにその顧客ニーズを反映させたいと考えています。」
例えば、私たちが1 日中触っているスマホなどハードで冷 たいテクノロジーデバイスの表面と対照的な柔らかな質感 や素材は人の気持ちを和らげます。ウッドやナチュラルなフ ァブリックは本物の上質感を追求しています。「それらは自 然界で見慣れたパターンや素材であることも多く、安心し て使うことができます。自然とつながっていることを思い出 し、必ずしもすべてがデジタルでバーチャルでないことを改 めて認識できるのです。」とRedshaw 氏は述べています。

本物への追求とは自分たちをありのままに表現していくこ と、前向きで肯定的な人間関係を養うことです。自席の近 くにプライバシーの高いアンクレイブというスペースを設け ることは良好な人間関係を構築することを促し、ゲストチ ェアを設けることでまるでホームのような雰囲気を創出し、 同僚や部下と1 対1 で対話することができます。

「素材、カラー、質感を考慮しながら、そこで働く人々がハ ッピーで健康でいられる環境を創造するなど、人々のウェ ルビーングを追求することはデザイナーとしての私たちの役 目でもあります。スペースとは足を踏み入れた瞬間の第一 印象から、人を魅了するものであることが理想です。」と語 るのはテキスタイルメーカーでSteelcase グループ傘下の Designtex のデザイナー兼副社長であるKimberle Frost 氏です。

仕事に向かわせる場所

私たちは人間の情緒的、感情的反応を念頭に置きながらスペースをデザインします。カフェでのコーヒーのアロマや居心地がよいテーブル、そのおしゃれな雰囲気はついエスプレッソでも飲みながらおしゃべりをしたくなります。それに比べ、オフィスの雰囲気はどうでしょう。騒がしい、プライバシーがない、快適に仕事ができるチェアがないなど不快と思う要因が数多くあります。企業のコラボレーションスペースはまさにこのカフェの雰囲気を再現しているところも多いのですが、細かい部分では同じように失敗しているのです。

「人々は多くの時間をこれらのスペースでひとりで、そし てコラボレーションをしながら仕事をしています。しか し、多くの場合、背もたれのサポートもなく、プライバ シーもなく、私物を置く収納もない状態です。これでは 完全に集中して仕事をこなすことはできません。」と語 るのはSteelcase のB-Free(ビー・フリー)ラウンジ コレクションのマーケティングマネジャーでるConstance Kocher 氏です。

B-Free ラウンジの開発チームは人々はラウンジエリア などでどのように仕事をしているかを調査しました。「リ ラックスするということ、カジュアルさ、自分がありの ままでいられる場所というものはすべて人間の感情的 部分に関係し、それが創造力や仕事へと向かわせてい るのです。」
オフィスの他のスペースから隔離しないカタチで視覚的プライバシーを設けたい場合がよくあります。私たちはこのことを「一緒に一人で」という表現で説明することがあります。つまり、知っている同僚とスペースを共有しながらも、パーソナルスペースがあり、プライバシーが確保された状態ということです。

「人々は他の人とのつながりやコラボレーションをしなが らも一人で集中できる環境も探しているということです。 一人で仕事をしながらも同時に他の人とも交流できる場 所ということです。」とSteelcase のプロダクトマネジ ャーであるBryony Gaschy 氏は述べています。

B-Free の新たな構成要素を追加するにあたって、適切 なプライバシーを確保できる半透明のファブリックを使 用したプライバシースクリーンを開発しました。チェア とテーブルは立つ/座る両スタイルを用意し、ラウンジ チェアのフォルムは目に優しい緩やかなカーブ状と角に は丸みを持たせています。

Coalesse ブランドのLagunitas TM(ラグニタス)チェア ではユーザーは背もたれのクッションを適切に配置させる ことで直立、少しリラックス、そしてリクライニングの各姿 勢をサポートできます。一人または他の人と仕事をする、テ ーブルに座る、リクライニングしながら会話をするなど、ユ ーザーのあらゆるポジションに対応します。

また、チェアやデスクの隣に置かれた私物を置くバックスタンド、デジタルツールを充電するための電源コンセントなど、ユーザーが一人で、そして同僚と一緒に落ち着いて仕事ができる「場」を提供しましょう。

素材は快適さももたらします。B-Free スクリーンのファブ リックは暖色系の柔らかみのあるカラーを採用しています。

レッグは本物感を追求するためにウッド仕上げを使用、ホームのようにソフトで触り心地のよい素材はワークスペースに質の高い雰囲気を創出します。

活力

様々なワークスペースは1 日を通して人が動くように促し、 この身体的な動きが活力の源になります。実際、ワーカー は仕事をしている間に、立つ、座る、リクライニングする という姿勢をサポートする「姿勢のパレット」を望んでいま す。

多様なスペースで働くために開発された製品がシンプルで エレガントなFree Stand 簡易テーブル。ノートパソコンな どの携帯デバイス用に作業面を提供し、畳んで収納でき、 軽量なので持ち運びも容易です。

「多くのカジュアルスペースは仕事をするための機能性に欠 けています。Free Stand は頑丈なテーブルで360°に回転 し、約50 – 68cm の幅で高さ調節ができます。この製品 があれば、持ち運びながら、どこでも仕事が可能になりま す。」とCoalesse のマーケティング副社長のKarin Gintz 氏は言います。

共有/所有、個人/グループスペースを健康的に混在させることでワーカーは容易に姿勢を変え、座りながら、立ちながら、リクライニングしながら同僚と仕事ができます。

もう一つのシンプルなワークツール、高さ調節付きのモニターアームはデスク面を有効活用できるという意味でも役立つツールの一つです。自分に合った高さやモニターまでの距離を正確に合わせることで眼精疲労も軽減し、姿勢も改善できます。

高さ調節付きのテーブルとウォーキングマシーンが合体した製品は様々な姿勢をサポートすると同時に気分転換にも最適です。

活力は自然光や外の景観からくる感覚的刺激によっても高められます。ディテールが大きなインパクトを与えることもあります。スペースで使用するカラーをうまく使うことで人間の行動を区分したり、身体的、精神的な反応を呼び起こしたりもします。一般的に暖色系カラーはエネルギーを引き出し、寒色系カラーは人の感情を静めます。ニュートラルな中間色系の色合いの中にアクセントでポップなカラーがオフィスで使用されることもあります。

医療環境では心理的効果があることからよくグリーンが使 用されることがあります。「グリーンは健康と成長のシンボ ルカラーとされていて、病院ではよく使われます。」と言う のがDesigntex のFrost 氏です。カラーに対する反応は 住んでいる地域、文化、歴史、個人の嗜好によっても大き く異なります。「赤に対するある人の反応は怒りであったり、 ある人は愛であったりさまざまです。国によっても色の嗜好 が違います。ですからカラーに関してはそれぞれの地域で 前向きで肯定的な感情を持つ素材やカラーを使えるオプシ ョンを与えることが重要です。」

「WOW(驚嘆)!」という感動をつくる

これらのディテールがどのくらいウェルビーングに貢献する のでしょうか? Designtex では定期的に顧客に会い、人 がファブリックやテキスタイルにどのような反応を示すかを 調べています。「私たちは人々が見て、触って、使って、う わー!って感動する製品を開発しようと努力しています。」

このようなリアクションはオフィス環境のパフォーマンスに も同様のことが言えます。ノースカロライナ大学の教授で 心理学者でもあるBarbara Fredrickson 氏は肯定的な感 情がいかに身体的、精神的な健康に影響を及ぼすかを探っ ています。明らかになったことは肯定的な感情はウェルビー ング以上のものをもたらすということでした。また、物事 を対処する能力も高め、長期にわたってウェルビーングを 育てます。

「肯定的な感情は個人の中だけに変化をもたらすものではありません。何故なら、個人が肯定的な感情を持つことが周りの人にも伝染し、顧客との関係にも好影響を及ぼします。肯定的感情は組織にエネルギーを吹き込み、最終的に企業の成功や繁栄につながっていきます。」とFredrickson氏は述べています。

小さな選択肢が大きな利益を生むこともあります。ワークツールなどの何でもない機能にも配慮したり、異なる姿勢や多様なプライバシーのレベルを調整できたりすることから、肯定的な感情を呼ぶファブリックやカラー、質感を選ぶことまで、全ての選択肢がオフィス環境の個々のウェルビーングを向上させる重要な決定事項になるのです。