リーダーシップスペースの進化

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企業の経営や組織を率いるリーダーたちの姿は時代とともに進化しつづけている。今回、Steelcaseは創業したての1915年に遡り、そのアーカイブを掘り起こしてエグゼクティブスペースの進化を辿ることを試みた。


役員室のドアの外に誰かがサインを掛けてから、企業のリーダーたちは社内での仕事の仕方をカタチづくってきた。しかし、経営環境が変化し、リーダーが組織を率いる方法も大きく変化している。従来の伝統的な階層型経営方法はもはや機能しなくなり、職場環境であるワークプレイスに対するアプローチ方法にも変化が求められている。

産業革命の時代と今日のモバイルでグローバルな経済環境を比べると、仕事の仕方は大きく変わってきている。
Steelcaseは創業当時からオフィス環境のトップランナーとしてその進化を研究しているメーカーである。昔のロールトップのエグゼクティブデスクは、エグゼクティブ用に情報セキュリティと効率性に重点を置いて設計されたものだ。今日のリーダーは、はるかに複雑なビジネス環境の中で、逆境にも強く俊敏な組織づくりを求められている。このためには昔とは全く異なるタイプのエグゼクティブスペースが必要となる。

Steelcaseは何十年も前から、企業の経営陣や社員を適切にサポートする環境づくりを実際に自社でプロトタイプを作成して試している。
例えば、ワークカフェ, イノベーションセンター 多彩なプライバシー. 最近では最先端のエグゼクティブスペースであるリーダーシップスペースを設計し、その評価プロセスに着手しているSteelcaseのグローバルデザインチームが創りだしたのは次世代型リーダーシップスペースだ。それは今までのスペースからリーダーたちを解放し、組織の中心に置くというものだ。このベースにはスペースは個人やチームをサポートし、人をつなぎ、成果を生み出す戦略的ツールだという考え方がある。

企業の組織を率いるリーダーたちの姿は時代とともに進化しつづけている。今回、Steelcaseはそのアーカイブを掘り起こしてエグゼクティブスペースであるリーダーシップスペースの進化を辿ることを試みた。


1915-1940: エグゼクティブデスク

事業を経営することはその経営者のスタイルに委ねることが多い。産業革命の時代に、多くの企業がそうであったように、会社は経営者と経理、そして、数人の工員で構成されていることが多く、経営者の人格が会社のスタイルになった。

企業が繁栄するにつれて、オフィスも同様に成長していく。企業は手工業経済から資本主義経済に移行し、組織構造や経営論をめぐる考え方も大きく変化した。20世紀初頭にテイラーが提唱したテイラリズムとも呼ばれる科学的管理法は、1910年代の時間の効率的な活用法として社会に広まった。

成功と地位を象徴するリーダーのデスクも、より効率的な作業フローを念頭に置いていた。組織が成長するにつれて、彼らはより専門性を高め、1920年代や30年代にはより創造的な仕事に移行した。企業にはもはやモノをより速く安く生産するだけではなく、新しいものや次なるアイデアをいかに生み出していくかが問われた。よって、デスクの設計に求められる要素はこの新たなクリエイティブプロセスをいかにサポートするかが鍵となっていく。

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エグゼクティブデスク

このロールアップエグゼクティブデスクは1915年に発売され、社会的ステータスの象徴となる。 Steelcaseの創設者であるPeter M. WegeとWalter D. Idemaはどちらもマホガニーの木目調のロールアップデスクで働いていた。当時、唯一可能な色はオリーブグリーンだった。

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エグゼクティブデスク

1928年に発売されたリーダーの権力を象徴する別のタイプのエグゼクティブデスク。ウッド仕上げ。色はグリーン、マホガニー、クルミ、オーク材の手塗り仕上げである。

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エグゼクティブデスク

1939年に発売されたこのエグゼクティブデスクは、初めてのスキッドベースのデスクでアイランドベースの先駆けとなる。


1950-1989: 効率から効果へ

1950年代のエグゼクティブスペースはその社会的ステータスを明確に象徴するものになる。ほとんどの経営陣は階層型システムの中で機能し、ファイリングスペースの量、会議テーブルの座席数、窓の景色にいたるまですべてが経営者の威信を伝えるものとなる。

現代経営学の先駆者でもあるピータードラッカー(Peter Drucker)は、1959年に「知識労働者」という言葉を作りあげた。その後数十年間、ドラッカーの哲学はますます複雑化する経営環境にたつ世界のリーダーに語りかけていくことになる。彼は効率から効果への移行も投げかけた。例えば、問題解決を図るよりは新たな機会に着目して、想像力をもって創造することが最も重要だと説き、この教えがリーダーたちを創造性への時代へと掻き立てていくことになる。

この時代の終わりに、人々の働き方は大きく進化していく。仕事はもはや単体のデスクでひとりだけでするものではなくなっていく。独創的かつ革新的であるためには、仕事は複数の専門分野のチームが一緒になり機能的に仕事をすることが要求され、デスクに固定されるのではなくオフィスの中を動くようになる。1970年代から1980年代までは大部分の企業の方向性はトップダウンで決定され、エンジニアリング、マーケティング、ファイナンスなどは一丸となって大きな問題を解決していた。

リーダーは組織の変化のスピードを上げる方法を模索していた。慣れ親しんだトップダウン式構造は企業の方向性を変えにくいシステムで、それも企業カルチャーの価値や重要性が叫ばれる中で変化せざるをえなくなる。企業が望む企業カルチャーを育むことができれば、企業としてより俊敏性のある組織を構築できる。その状況の中で、リーダーのためのスペースも変化を遂げ、共有スペースやコラボレーションスペースが増えていく。

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効率から効果へ

1950年代後半のEasyrest(イージーレスト)チェアと組み合わせたMultiple-15デスクは、スペース効率と作業効率を併せ持ち、自席内での共同作業もサポートするように設計されていた。

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効率から効果へ

この1956年に発売されたFlight Line(フライトライン)デスクのスタイリングは、無限に広がる未来のオフィスを描いている。

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効率から効果へ

1957年に製作されたこの広告はエグゼクティブの「業務効率」に注目し、瞬時にモノを適切な場所に収納できることでスペースをスッキリと整理整頓ができる機能性を訴求している。

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効率から効果へ

この1958年のエグゼクティブオフィスは、エグゼクティブ同士のグループミーティングのニーズに応えるために開発された多様なセッティングを紹介している。

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効率から効果へ

これは1960年に撮影されたSteelcaseのマネージャー、サム・コール(Sam Corl)の個室である。ディクタフォン(口述録音機)を使用しながら仕事をし、秘書のデスクも近くに設置されている。このスペースはその後Steelcaseの創業者の1人に引き渡された。

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効率から効果へ

1961年のこの広告はマルチゾーンからなるスペースを紹介している。伝統的なエグゼクティブオフィスの様子を残しながらも、よりカジュアルでチーム作業にも対応できるレイアウトになっている。

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効率から効果へ

1968年に撮影されたSteelcaseのエグゼクティブオフィスの写真。クロームラインが特徴のDeluxe 4200シリーズのデスクには、机上面を有効に活用するために、デスク背後に壁面収納キャビネットが設置され、電話器パネルに一体化されたデータ装置、引き出し口、レターサイズの収納ファイリングなどが備わっている。

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効率から効果へ

1968年のオフィスは壁面を活用しながら、よりカジュアルなエリアが増えている。

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効率から効果へ

1980年代、デザイナーはエグゼクティブオフィスを囲む周囲のスペースをその機能として取り込み始めた。このSteelcaseのリーダーシップスペースにはエグゼクティブ同士のコラボレーションや交流を促すソーシャルスペースなど数々の共有スペースが配置されている。

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効率から効果へ

1983年にSteelcaseの会長であったボブ・ピュー(Bob Pew)が働いていたスペース。オフィスはブランドを象徴するものと考えられ、エグゼクティブスペースもユーザーの個性を強く表現している。

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効率から効果へ

1980年代にSteelcaseのデービッドD・ハンティングJr(David D. Hunting Jr.)が働いていたスペースには、共同作業をサポートするさまざまなセッティングが配置されている。

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効率から効果へ

1980年代のSteelcaseの最高経営責任者(CEO)であったフランク・マロッティ(Frank Merlotti)のスペースには、屋根付きサンルームが付いていた。

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効率から効果へ

1980年代の終わり近くに、Steelcaseの経営陣たちは何が起きているのかを把握するために、閉じられたスペースからよりオープンな交流重視の執務環境へと移行していく。 自社のコーポレート開発センターはコラボレーションを向上することを目的にContextシステム家具をカーブ状にレイアウトしている。


1990-2010: 社会的ネットワークを重視

1990年代には、情報の流れやビジネスの進化スピードも加速していく。この頃から企業は組織の構造に加え、人間同士のつながりである社会的ネットワークや企業カルチャーに注目し始めた。良好な人間関係は複雑な組織の中でアイデアを生み出す土壌を形成し、人々が相互に交流し、交わるスペースの創出がより一層重要になっていく。

Steelcaseは1990年代半ばには、リーダーシップスペースの創造にあたって今までにない画期的なアプローチの開発に挑戦している。新たなエグゼクティブスペースとなる「リーダーシップコミュニティ」は、肩書きによって割り当てられていた専用個室や会議室を手放し、メンバー同士の交流を高め、人間関係を築くための多種多様な共有スペースからなるスペースへと移行されていく。

リーダーシップコミュニティは、エグゼクティブの執務環境を取り囲むようにフロアの壁の内側にあるすべてのスペースを活用し、進化させた。その目的は1日の間にメンバー同士がカジュアルに出会い、交流できるように仕掛けることで、信頼関係や協調行動を強化することにあった。

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社会的ネットワークを重視

リーダーシップコミュニティのこの1996年モデルには、中央に人々が集うテクノロジー装備の共有スペースが配置され、イノベーションを生み出す様々な工夫が施されていた。

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社会的ネットワークを重視

space designed for collaboration
1990年代のこの写真は、CEOのジム・ハケット(Jim Hackett)と世界的クリエイティブ集団のIDEOのヘッドであるデービッド・ケリー(David Kelley)が中央のコラボレーションスペースでチームメンバーと働く姿を映し出している。

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社会的ネットワークを重視

2007年には、リーダーシップコミュニティは再設計され、自然発生的に出会う人々の会話を促すソーシャルなスペースが多く設置された。

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社会的ネットワークを重視

2000年代、テクノロジーの進展とともに、リーダーシップコミュニティにはコラボレーションプロセスを加速させるテクノロジーが融合され、スペースはさらに進化されていく。

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社会的ネットワークを重視

開放的なオープンスペースはコミュニケーションの障壁を取り除き、共同での創造的なプロセスを加速させた。(写真2007年)


今日:新リーダーのためのプロトタイプ

2016年に、Steelcaseの研究員やデザイナーたちは次世代型リ ーダーシップスペースの創造に着手した。. 新スペースは時代が要求する新リーダー 像の象徴であり、この新たなホームベースは、組織全体の開放と相互のつながりを加速させるものとして位置づけられた。

プロトタイプとしてつくられたこの新しいコミュニティスペースは、米ミシガン、グランドラピッズにある本社キャンパスの1階の中心にある。以前のリーダーシップコミュニティとは異なり、新スペースは人々が行き交う交差点のような場所に位置し、必要に応じてプライベートエリアにアクセスできる。リーダーたちを会社の中心に置き、彼らがより見えるカタチでのレイアウトが採用された。

スペースの敷居は低く、よりオープンにすることで、アイデアと人々が行き交う中心にいるのが組織を率いるリーダーたちということになる。肩書きやステータスを外し、誰もがどこでも仕事ができるようにしたリーダーシップスペースはもはや目的地としての「場」ではなく、人々が行き交い、人間関係を強化する通路としての役割を果たしている。

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新リーダーのためのプロトタイプ

Steelcaseの新たなリーダーシップコミュニティには、プライベートな個室、セミプライベートな隠れ家のようなアンクレイブ、グローバルに分散するメンバーをつなぐ会議室などが装備されている。(写真2016)

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新リーダーのためのプロトタイプ

エグゼクティブたちは専用個室ではなく、オープンな執務環境で働き、必要に応じて個室を使用できる (写真2016)

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新リーダーのためのプロトタイプ

リーダーシップコミュニティ内の会議室は、ネット上で簡単に予約が可能で、すべての社員によって使用が可能である。より多くの社員がリーダーシップコミュニティを使用するように奨励されている。(写真2016)

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新リーダーのためのプロトタイプ

コラボレーションスペースに加えて、集中と休息のためのスペースも用意されている。これらの人間の基本的ニーズをサポートするために、リーダーシップコミュニティのいたるところに隠れ家のようなアンクレイブが設置されている。(写真2016)

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新リーダーのためのプロトタイプ

エグゼクティブの秘書は互いに隣り合って座ることで、エグゼクティブ同士のコミュニケーションやスケジュール調整がより容易になる。(写真2016)


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