ラーニング

アクティブラーニングセンターで、教育の変革に挑む。

教室のあり方を再考した12の教育機関による調査で、アクティブラーニングセンター新設によりコラボレーションが増え、教員主導型教授法の変革につながったことが明らかになった。

所要時間 20分

Cycle 1 助成金受給機関による初年度調査結果の公表

昨年度1年間にわたり、12の教育機関がアクティブラーニング支援を目的に設計された教室を使用し、学校教育の革新を目指し様々な取り組みを行った。Steelcase Education主催のアクティブラーニングセンター助成金プログラムに参加した機関が培った経験は、従来とは異なる新しい方法で学習と教育の推進を目指す人々のいい参考になるはずだ。

助成金プログラムについて

アクティブラーニングセンター助成金プログラムは、アクティブラーニング育成の推進に先見の明のある教育者や教育機関に助成金を支給するプログラムだ。本助成金を支給するSteelcase Educationは、物理的な教室スペースを活用し積極的な学習イニシアチブの実施と拡大を目指す優れた教育者や教育機関を選定し、支援を行う。Steelcase Educationは、アクティブラーニングがひとつの総合的な(教育の)エコシステムの中で機能しながら、教授学、テクノロジー、スペースに及ぼす影響の大きさについて人々が理解を深められるよう全力で取り組んでいる。

この助成金プログラムの対象は、アメリカ、カナダ、メキシコの6年生から12年生(12年の通し学年)、カレッジや大学の学生が学ぶ教室とした。

1年目のCycle 1

サイクル1では助成金対象機関として12組織を選出し、各組織に家具、統合テクノロジー、教室のデザイン、設置、研修(トレーニング)、および変更後評価に加え、アクティブラーニング教室を1室提供した。またアクティブラーニング教室は28〜32人の学生を収容する3つの教室タイプから好きなタイプを選択でき、選択する教室タイプによるが3万5千ドルから5万ドルの間の助成金を受けることが出来る。

概要

新設した教室で初年度の指導を終え、本プログラム参加機関はアクティブラーニングセンターについて次のように報告した。

  • コラボレーションとチームベースの学習が増加した
  • 学生の学習意欲と授業への参加が推進された
  • 教員主導型だった教授法の改革につながった

調査について

研究手法
すべてのアクティブラーニングセンター助成金の受給機関には「変更後測定ツール」が与えられ、その測定ツール補完のため組織は各自で追加教室査定を添付し独自の研究趣旨をまとめるよう喚起されている。したがって、このレポートに掲載されている調査結果は様々な方法で収集したデータに基づく共通したテーマについて述べられており、そのテーマとは生徒のパフォーマンス評定、教室観察、そして調査年度前、年度中、年度後それぞれの時期に実施された生徒/教員調査などが挙げられる。

調査結果の裏付けは個々の機関に帰属するデータと所見によって実証されている。

参加機関


研究結果1:助長された共同学習

アクティブラーニングによるアプローチを推進する教育者は教室でのコラボレーションやチームベースでの学習経験の育成に関心を抱いていることが多い。総じてアクティブラーニングセンター(以下、ALC)の助成金プログラム受給機関は、新設したALCスペースがこの育成の一助になっていると報告した。

良好かつ頻繁な交流
ALCを体験したグローバー・クリーブランド・ミドルスクールの学生調査によると、87.3%の学生が本プログラムが提供した教室用家具の導入後、仲間同士のプロジェクトがしやすくなったと回答した。アリゾナ大学の学生調査でも同様の結果が得られた。さらに具体例を挙げると、メトロポリタン・コミュニティカレッジの調査ではALCで学んだ学生は仲間の学生のことをよく認識し、互いの名前や授業で話し合った内容をより明確に思い出すことができたと報告している。

「動き」と「共有」の増加
多くの助成金受給機関は、レイアウトを容易に再構成できるALCの可動式家具が、教員がチームベースの学習やグループプロジェクトを実施する回数を増やす誘因になったと結論づけた。また、ホワイトボードと高度なプロジェクション機能により学生間および学生と教員間の共有が促進されたことも示唆した。これらの調査結果は、メトロポリタン・コミュニティカレッジ、ウエスト・アラバマ大学、カリフォルニア州立大学が教員と学生の両方またはいずれか一方の調査に基づき報告したものだ。

中でもウエスト・アラバマ大学における教員調査データは、柔軟性のあるALC家具がよりインタラクティブでチームワーク作業を行う参加型の学習体験を可能にしたという見解を示した。ALC家具を導入した教室でグループ作業を行った学生は自信をつけ、クラスの仲間とのアイデア共有に意欲を示すことが観察された。

調査した学生の87.3%がALC家具により他のクラスメートとの作業がしやすくなったと回答した。

グローバー・クリーブランド・ミドルスクール

アクティブラーニング助成金プログラム


研究結果2:学生の学習意欲の向上

多くの助成金受給機関が、アクティブラーニング教室での授業を体験した結果、学生の学習意欲がさまざまな側面で向上したと報告した。

斬新な創造性と学業面での成果

メトロポリタン・コミュニティ・カレッジおよびHACCセントラル・ペンシルベニアズ・コミュニティカレッジが調査した学生は、従来型の教室と比べALCでの体験は学習意欲の水準が高いと回答した。ほとんどの受給機関が概して集中力が高く積極的に授業に参加する生徒と優れた学業成績の間に関連性があると指摘した。P.K. ヨング・ディベロップメント・リサーチ・ハイスクールが実施した学生および教員の調査回答はさらに詳しい見解を示した-それは、新設したALCが学力向上そして「授業に参加しクリエイティブになりたい」という学生のモチベーション向上に寄与したというものだ。

参加、モチベーション、そして集中力の向上

ウエスト・アラバマ大学とメトロポリタン・コミュニティ・カレッジでの助成金受給機関では、ALCでの体験が学生の授業参加にプラスの影響をもたらし、生徒が授業に集中するようになったことがわかった。また従来式教室でのセッティングに比べて生徒同士で生産的な会話が交わされていることが認められたと回答する機関もあった。

一部の助成金受給機関は、ALCのリラックスした雰囲気と柔軟性の高い教室セッティングが学生の心を落ち着かせ、より質の高い学習体験への道を作っていると報告した。メトロポリタン・コミュニティ・カレッジの学生は、ALC教室で授業がスタートし心が落ち着くまでに要した時間は、従来型の教室よりもALCの方がはるかに短かったと報告した。ウエスト・アラバマ大学のある学部研究員は「『心地よさ(快適性)』のモチベーションへの貢献度は非常に高い」と語った。

より活発で実践的な体験

学習意欲の向上を報告した助成金受給機関からは、ALCの可動式家具のおかげでこの恩恵を享受できたという意見も寄せられた。

メトロポリタン・コミュニティ・カレッジとHACCによる調査では、自校の学生と教員が学習意欲と学習習熟度を促進するとされる実践的な学習手法の一助となる複合的な組み合わせをいとも簡単に作成できたと述べた。

89.9%の学生がALC教室での授業は学習意欲が向上すると報告している。

メトロポリタン・コミュニティ・カレッジ

 

アクティブラーニング助成金プログラム


研究結果3:教員主導型教授法の変革をサポート

新しくより活発な学生中心の教授法や学習方法への移行が難しいケースもある。しかしALC教室を体験した教員からは、概してこの教授法への移行でよりクリエイティブに、より意欲的に教えることができるようになり満足しているという報告が寄せられた。

よりクリエイティブに、より学生中心に

P.K. ヨング・ディベロップメント・リサーチ・ハイスクールの助成金受給チームは、ALCのスペースではよりクリエイティブで学生中心の指導ができると報告した。同様に、アリゾナ大学の調査でも同大学教員はALCがよりクリエイティブな教授方法の閃きに寄与したとの見解を示した。本助成金受給機関の多くは、例えば個々のホワイトボードや教室の画架(イーゼル)などがいかに多彩な用途を生み出し、学生の表現力を高め、新しい指導方法の閃きに寄与したかを説明した。「壇上の賢人」と呼ばれる講義形式の教授法を備えた従来式の教室とは対照的に、柔軟性のあるALC家具は講義優位型の指導から没入型で教員と生徒互いに高め合う体験へのシフトをサポートした。

多彩なオプションと容易な移行

フェアフィールド大学やメトロポリタン・コミュニティ・カレッジなどのいくつかの機関は、ALCでは教職員がクラスディスカッション、ペアや少人数でのグループワーク、体験活動、メディアの活用、対話型ポーリング、およびその他の技術など多種多様な教授法を採用できたと報告した。多くの助成金受給機関は、ALC教室がもたらした可動性と多彩なオプションが教授法の継続的な変化を支えていると指摘した。さらにALCの教室のおかげで授業中に教室内を動き回り指導できるようになったと述べる教育者もいた。オハイオ州立大学は、自校の教育者たちはこの「動き」を教授法の変化、ひいては大学教育の変革として受け止めていると報告した。

VerbとNode

“私が以前より独創的になれたのは、優れた柔軟性を持つ家具のおかげです。”

Instructorオハイオ州立大学教員

和やかな雰囲気、満足のいく体験

ALC助成金受給機関は、総じて教員と学生双方にとってより有益な体験だと表現した。フェアフィールド大学の教職員は教える意欲が向上しALCでの授業を堪能していると回答した。メトロポリタン・コミュニティ・カレッジの教職員は、可動式家具を使用することで非従来型の教室レイアウトが可能となり、教室は和やかな雰囲気になり生徒は授業を待ち望むようなったと報告した。


アクティブラーニングのストーリー

サウスカロライナ州ロックヒルにあるサルーダ・トレイル・ミドルスクールは、ALC導入後、保護者の教育への関わりが深まり生徒の学業成績が向上したが、導入前は850人を超える在籍生徒のうち30%の学生の学力は学年平均を下回っていた。プロジェクトベースの学習に対する学校の取り組みは、メタル製の机や安定性に欠けた本棚、粗悪なプロジェクションツールや照明などの教室用家具により長らく制限されていたからだ。

サルーダ・トレイルがアクティブラーニングセンター設置から1年を経て感じた改善点を挙げた。

急速に深まったのは保護者の教育への関わりだ。 保護者たちは来校してすぐにALC教室と自分たちがかつて学んだ教室との違いを実感できた。「我が校の生徒の多くは貧困世代の出身ですので、その保護者たちは自分のネガティブな教室体験から学校に否定的な考えを持っており、学校に来ることに懐疑的なのです。」こう語るのはALCで7年生担当の英語(English Language Arts)教師のJulie Marshall博士だ。「保護者たちが自分の子どもが通う学校に対し抱いていた感じ方や接し方をALCが刷新してくれました。」

1年間で保護者ボランティア率が2倍に上昇し、保護会の参加者数も増加したことを受け、教員は保護者による自宅での学習サポートの改善を認めることができた。

学生は以前に比べ積極的で前向きになり、それを態度で示した。「生徒たちはALCでの授業を日々大変心待ちにしています。」とMarshall博士は述べる。「廊下で私に会うと、生徒たちはこの教室についてお礼を言い、私にハグをするのです。」教員たちは生徒の学習態度や振る舞いが刷新され、学びに対する無関心さは学びへの渇望に屈したことを確認した。

ウエスト・アラバマ大学ではこれまで見られなかった学生の活気に満ちた行動がALCで確認された。

アラバマ州リヴィングストンにあるウエスト・アラバマ大学は、大学1年生から大学院レベルのさまざまな学年の学生たちと種々の講義のために利用されてきた従来型の教室をアクティブラーニグセンターに替えるよう提案した。ウエスト・アラバマ大学はALC導入から1年後の調査で「教員と指導」、「学生と学習」いずれの調査でも肯定的な結果が出たことを報告した。

教員による指導は以前にも増して学生中心の授業へと変化した。教室の観察、学生調査、教員インタビューを通して、学生が授業で学んだ内容について探究し、仲間と話し合い、その内容について詳しく発表するというより学生中心の教育アプローチへ移行していることが見て取れた。

学生たちは以前に比べ授業に集中し真剣に取り組むようになった。一部の教職員は、学生たちはALCでは授業に集中し真剣に取り組むため、彼らの学習習熟が促進されたと報告した。ウエスト・アラバマ大学は自校学生の学業成果が向上し、学生たちの学びについての概念とテクノロジーの処理能力がより速くなったと報告した。

それに伴い、ALC導入後の学生の参加スコアとフォーカス・アテンションのスコアは導入前のスコアに比べ大幅に上昇した。

交流がより大きな支えになり、より大きな自信につながる。同じ教員によるALCでの指導と従来式の教室での指導を比較すると、ALCでの体験は以下の点で異なることが観察された:

  • 教員-学生間の知識交流は、対等な立場でアイデアを自由に表現することを促す、むしろ会話に近いものだった。
  • 教員は非常に流動的で、教室の中で立つ位置を常に変えることでより多くの学生の注意を引き寄せ、彼らの学習意欲を掻き立てた。
  • 教員は、学生たちが探索し、物事に対し創造的思考法そして懐疑的思考法を学ぶにはさまざまなテクノロジーの使用が役立つと考え、その使用を奨励した。
  • グループ学習に取り組む学生たちは、自信を得、授業に参加し自分専用のホワイトボードを使用し自身のアイデアや成果をクラスで共有しようと熱心に取り組んでいる。

「学生たちは刷新された学習環境と新体験にわくわくしています…彼らはこのALCにいると心地よく感じ、それが学習に対する彼らのモチベーション向上に貢献しているのです。」

THE UNIVERSITY OF WEST ALABAMAによる調査

教育実習と学習体験が改善されたP.K. ヨング・ディベロップメント・リサーチ・ハイスクール
フロリダ州ゲインズビルに校舎を構えるハイスクールのP.K. ヨングは、Honors English(上級英語)を受講する11年生及びAP English(AP英語。州立大学1、2年レベルと同程度の英語クラス)を受講する学生に新設したアクティブラーニングセンター教室を割り当てた。

学生たちは授業に積極的に参加しやる気に満ち溢れていた。ALCを利用した学生からは、この新しい教室には今までの教室に比べ快適さ、動き、作業に必要なスペースが増し、学生たちのより良い学習体験に寄与したという意見が挙がった。生徒と教員双方が、ALC教室で以下に挙げる行動で中程度から大幅な向上があったと指摘した。

  • 学生の学習意欲
  • より高い成績を収める能力
  • 授業に参加しクリエイティブになりたいという高い意欲

学習モードは流動性で一変する。P.K. ヨングが、ALCの効果を描写した、とある英語の授業で起きた以下の話を提供してくれた:

小論文のドラフトを書く授業の日に、とある学生グループが小論文を書くためノートパソコンと文書共有システムを使用し、互いのドラフトについてコメントを出し合った。2つのテーブルは押してぴたりとつけると、5−6人の学生と彼らの学習教材が置ける広いデスクに様変わりした。その学生グループの1人がホワイトボードを使いグループの問題点を書き出し、また、教室内の画架(イーゼル)やブラケット(張り出し棚)に立て掛けられたホワイトボードのメモにはパソコンキーボードのショートカット、アウトラインのヒントと順序、一般的なスペルミスやメカニックエラーの修正などが書かれており、これらが学生たちに小論文執筆の際の注意点を促す役割を果たした。これらのプロセスはすべて従来式スペースでも何らかの形で実施されていたのかもしれないが、ここまでシームレスに行われていなかったはずだ。ALCではタイムロスと学生の集中力低下を最小限に抑えつつ、これらのタスクを見事達成することが出来たのだ。

「ALCではタイムロスと学生の集中力低下を最小限に抑えつつ、これらのタスクを見事達成することが出来ました。」

P.K. YONGE DEVELOPMENTAL RESEARCH HIGH SCHOOL 教室オブザーバー

結論

ポジティブな成果を携え、さらなる高みを目指し進歩は続く。
アクティブラーニングセンター助成金プログラムを通じ、ALCという新教室での1年間を終えた最初の12の学校や大学からは大変ポジティブな体験談や成果が報告され、私たちに大きな望みを与えてくれた。Steelcase Educationは、この受講者のデータやストーリーが新しくより活発な「学習」モードと「指導」モードの促進を目指す人々に閃きを与えられることを切に願っている。

この研究は新たな課題と改善の機会も明らかにした。一例を挙げると、とある受給者はアクティブラーニングセンターのリソースを最大限に活用するにはより積極的かつ綿密な教員のトレーニングの必要性を訴えた。Steelcase Educationはスペースの有効性を最大化し望ましい結果に到達すべく、今後も受給機関とともに学びを継続する。

差し当たって上述の12機関はALC使用期間および査定期間の2年目に突入し、本プログラム調査は今後も継続していくが、これと並行し別のサイクルが新たにスタートした。新しく加わった13のALC助成金受給機関は、現在新しい教室に馴染むべく取り組みを続けている。

私たちは調査結果を順次公開し、これらの調査で学んだインサイトをSteelcase Educationのアクティブラーニングへの取り組みだけでなく、未来の学習と教育に携わるすべての人々のためのSteelcase Educationの取り組みにも生かしていくつもりだ。


もっと詳しく知る

アクティブラーニングセンター助成金プログラムの詳細は、Cycle 1助成金受給機関が登 場するビデオ、各学校の調査研究の詳細、およびその他の資料をご参照ください。

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