Q+A: デザイナーがインスピレーションを得る方法
働く「場」は機能性を保持しながらもその空間でインスピレーションを得られるようにデザインされていることが望ましい。感性が刺激されるとマインドに触れ、日々のハードワークからホッと一息つけたり、新たな視点で物事を捉えられるようになるからだ。
過去5年間 Designtex の社長を務めるSusan Lyons氏は、人の感性をくすぐるテキスタイル、内装材、その他のエコ素材を開発するイノベーターチームを率いている。DesigntexはSteelcaseのグループ企業でテキスタイルや内装材のデザインと製造における世界的リーディングカンパニーだ。
360では、今回、Designtexの社長であるSusan Lysons氏にインスピレーションを得る場所、新製品を生み出すためにチームがどうインスピレーションを得て、何がチームを掻き立てるのかを聞いた。
360: 貴方のチームは次に何が来るのかをどう把握するのですか?働く「場」においてどんな色や質感がそこで働く「人」の感性を刺激すると考えますか?
Susan: 情報が溢れる今の時代、それを見分けるコツは、トレンドが何かということよりも人々が何をしているかに注目することです。私はその情報の中からお客様にとって価値ある情報を抽出するよう努めています。
当社ではインターネットを駆使し、世界中のパートナーとの協力体制を整えています。外の世界のアーティストやデザイナーと協働することは非常に有意義だと考えています。枠に囚われず異なる視点を持っている彼らは私たちを違う新たな世界へと導いてくれます。抑制していたものから解放し、想定外のエキサイティングな旅へと私たちを誘うのです。
360: 貴方は仕事の質を高めるためにチームを奮起させるものを活用するようどう仕向けるのですか?
Susan: 私たちはビジュアル思考という概念を強く信じています。当社のスタジオでは、カラートラッキングをビジュアルで表示しています。カラーの微妙な変化を壁に表示しデザイナーがその状況を把握できるようにするのが狙いです。建築とファッションを調べ上げ、それをグリッド上にマッピングし、今まで私たちがしたこととどうリンクしているかを確認し、その後、それを使って今後違う方向にいくとどうなるかを検討するのです。このように当社ではカラーを積極的にビジュアル化するのです。これには全員が参加し状況がどう変わるかを見るのです。わずか6か月でもちゃんと機能するのです。
当社のスタジオは、スチレンボードが散らばったりなど非常にDIY精神溢れ、かつ柔軟性のあるスペースです。デザイナーは自分たちを奮い立たせる独自の方法を個々に持っています。それは例えば糸やポストカードかもしれません。私にとってはそれはオレンジの上にカーブを描いた一枚のスリット入りの用紙で私のインスピレーションボードにはそれが貼られています。
360: 今、どんなカラーやテキスタイルが貴方の感性を刺激していますか?
Susan: 私は本当にすべてのカラーが好きです。カラーとは環境や状況を背景に決定されることが多いのです。例えば、私にとってカラーはいつも子供の頃の思い出につながっていてつい黄色と答えてしまうのです。
今はフェルトに夢中です。ちょうどフェルトの大きなコレクションを立ち上げたところです。フェルトというのは先史時代の人間が手で開発した歴史上最古のテキスタイルでもあるのです。ですからフェルトに感謝しなければなりません。
360: 職場環境において、素材というものはそこで働く人の意欲を掻き立てるのにどう役立っていますか?
Susan: 社内で「レイヤリング」ということについてよく話します。環境の中でさまざまな製品がどう層を成しながらそこにいる人の体験を創り出しているかということです。質感と光沢の異なる層や素材が持つ全ての要素を加えるという行為に興味があり、それが非常に豊かな環境を生み出すものと私は考えています。
それは都市にも似ていると思います。都市にはイノベーションを奨励し、人間の思考を刺激する光景や匂いが溢れています。私は素材も同様だと思っています。カラーがついたパーツやピースを一緒に組み合わせることでそれが人間に大きな影響を与えるのだと思います。
意図的にデザインされた「場」がデザイン、マテリアリティ、パフォーマンスをいかにブレンドさせながら感性を刺激しているかを lookbook冊子でご覧いただけます。